昭和62年の50円玉は1万円ぐらいの価値があるらしい。その年は極端に発行枚数が少ないのだ。
それを知らない人には50円の価値しかないのに、発行枚数が少ないという情報を知っている人には1万円なのだ。情報すげえ。ワンオブゼムだったものが急に意味を持つ。
なんでもないものや景色だけど、あることを知るとがらりと違って見える。そんなカタルシスを味わえる場所を探してみましたよ。
(林 雄司)
その1) この住宅街が実は貴重なのだ
なんの変哲もない住宅街の写真だが、ここがとても貴重な場所なのだ。
県境なんて別に珍しくもない。住宅街ではさらっとあるのも普通だ。いや、でも違うのだ。tだの県境ではない。東京都の地図を見てもらいたい。
南端の町田市のあたりにぴょろっと飛び出た部分がある。飛び地ではないがほんのわずかな部分でつながっている。拡大地図はこうだ。
ここの赤い線をたどればあっというまに東京を東西に横断できてしまう。東京横断の最短ルートなのである。東京の地図好きがここどうなっているんだろうと日々うっとりしている場所がここなのだ(少なくとも僕は!)。
そして最短ルート東側の入り口こそ、冒頭の写真の場所である。
運河じゃない、パナマ運河が掘られる前のパナマ地峡である。細くてかろうじてつながっているところ。プラモデルに例えるならパーツがフレームにつながっているあの危ういところだ。2回ぐらい回転させたら切れてしまうところだ。
そして東京で唯一、10分で横断できる場所である。なんて珍しい。
レアさをアピールするためにフォトショップで額縁風の縁までつけてしまった(フォトショップ and 額縁 で検索するとたくさん出ますね)。
では徒歩の横断に出発です
最短ルートを使った横断に出発だ。
感想をメモする前に横断が終わってしまった。およそ約10分。端から見ると住宅街を散歩していただけだが、ここが東京のでっぱりであることを知っている者にとっては東京横断なのだ。
そもそもこういうのを横断と言わないのではないかという気もするが、ここはすごいのだという思いこみ力の前ではその声もかき消されるというものである。
この写真を撮ったあと、駅前のミスタードーナツに入ったときにズボンのチャックが開いているのを発見した。上の写真もよく見るとあいているのだが(拡大しませんよ)、ということはズボンのチャックを開けたまま東京横断、しかも最短ルートで、という記録を作ってしまったのかもしれない。
ああもうどうしよう、身もだえするほどのレアである。