大会当日5時35分
本番の日は異味香に5時半に集合だ。大会自体は10時から始まるのだが、当日の準備に相当な時間がかかる見込みである。
当然遅刻は厳禁。「当日遅刻したらおいていきますからね!」と僕も言われている。でもこの日僕が目を覚ましたのは5時20分だった。
トランクに大量の冷凍焼売と調理備品を詰め込んで、会場の埼玉スタジアムに出発する。
「僕今日寝れなかったですよ」 「おれはちょっとは寝れたかな。でも明日会社なのがイヤだなあ」 「しかしここまで来たら優勝したいっすよね」 「優勝したら全国大会行けるのかね?」 「11月に姫路でやるやつですよね」 「行きたいけれどね、ぼくらの焼焼売、どうしても『作っちゃった』感があるから…」 「あー『作った』感ね…」 「それは…」
道中の会話が面白い。テンションが高いのか低いのか。多分、ずっとここまで曖昧なモチベーションのままどんどん事態が進んできているんだろうな、と思った。
開場3時間前
山田さんによると、B級グルメ大会が開始する10時までには、焼き上がった焼売を1800個用意しておく必要があるという。
この大会、どうも「時間との戦い」の要素が強い。たとえばこの冷凍焼売は前日に常温にさらして半解凍の状態にしてある。
そうすることによって「焼き時間がいくらか短くなる」のだそうだ。
僕はこういうのは文化祭の延長みたいなノリだと思っていた。しかし本気で優勝を狙っている以上、全ては周到に管理されている。「トイレ行きたい人は今のうちに!焼きが始まったら行けなくなるから!」と、すごい注意事項がとぶ。恐い。決起集会の時に焼くのを安請け合いしなくて良かった。
この保温のための発泡スチロールにも一つ一つ番号が振られていて驚いた。「作った順に出す」ということが徹底されているのだ。
勝利のための布石は打ってあるように見える。しかしこうした工夫を見れば見るほど「勝負の行方のわからなさ」みたいなものがズンと重たく印象づけられる。