よみがえる平安時代

引き続き、ショッピングモールの中にあるお店の調査に当たろう。ひっそりメニューはたくさんのメニューがある店から選ぶと面白い。そして、多くの人が知ってるメニュー豊富な店と言えばあそこだろう。

サーティーワンアイスクリームだ。なにしろ店名からして31種類もアイスがありますよと言ってるわけだ。

子供の頃、プールの帰りに連れて行ってもらった記憶があるこの店。初めて行ったとき、その種類の豊富さに何が何だかわからなくなった覚えがある。

久しぶりに今回来てみたが、その混乱はおっさんになった今でも同じだった。どうしよう、こんなにあったら選べない。

ただ、今回の企画では自分で選ばなくていいから助かる。この店では店員さんにあまり出ないアイスを聞くと、珍しくはっきりパパッと答えてくれた。

「大納言あずき」である。思い出されるのは平安時代だ。

と言っても、日本史における平安時代のことではなく、中１の時、同じクラスにいた女子のことだ。なんとなく風貌が平安時代っぽくて、心の中で勝手に彼女のことを平安時代と呼んでいたのだ。

文化祭の準備のとき、平安時代と私は大きなポスターを描く班になった。一枚の大型ポスターを一緒に描くのだが、平安時代はものすごく絵がうまく、私が描いた部分と技量の差がはっきりわかる出来映えになってしまった。

あちゃーと思っていたのだが、平安時代は私を責めるでもなく、「さすが貴族」と思った覚えがある。

ドーナツのときと同じように、店員さんは「お年を召した方が選ぶことが多いです」とのこと。ひっそりメニューを選ぶのは、高齢者の好みをなぞる面もあるようだ。

続いてやってきたのはスターバックスコーヒー。日本上陸して日が浅い頃、初めて行ったときにはメニューがいろいろあってどうしていいかわからなかった覚えがある。

今ではそんなことはなくなったが、こうしたメジャーなお店にもひっそりメニューはあるのではないか。

店員さんにまずは人気メニューを聞くと、「そうですね、やっぱりキャラメルマキアートですねー」と教えてくれた。あれだ、注文が入ると店員が独特のリズムでオーダーを通しているやつだ。初めて聞いたとき、何かの呪文のように思った覚えがある。

今回訪れたのは２月という寒い季節。冷たい飲み物は売れにくいのが当たり前だと思うので、今回はホットドリンク限定でひっそりメニューを聞いてみた。

少し考えて、店員さんが「みなさんあんまり知らないみたいで…」と教えてくれたこのメニュー。「キャラメルスチーマー」というものだ。

決して隠れオーダーというわけではなく、メニューにしっかり載っているものだが、個人的にはこれまで知らなかった。目には入っていたのかもしれないが、認識してなかったということか。

その正体は、キャラメルシロップを入れたホットミルクに、ホイップクリームとキャラメルソースが乗っているというもの。つまり、コーヒーではないのだ。

色白でふわふわしていて、甘いにおいを漂わせるキャラメルスチーマー。これまでと同じように学生の頃の記憶をたどってみたが、都合よく思い出される女の子は出てこない。いたのかもしれないが、記憶に残るような縁はなかったのだろう。

説明通りのおいしさのこのドリンク。カフェインを摂らないようにしてるけどスタバで甘くてあったかい飲み物が飲みたい、という方にはおすすめだ。