石炭が送られる工場
熊谷から北西に伸びる秩父鉄道の貨物線をたどって行くと、街中にそびえるセメント工場に隣接した場所で線路が激しく分岐している。ここが石炭が送られる三ヶ尻駅だ。
この駅には、石炭だけでなくセメントの原料である石灰石も貨物列車で送られてくるらしい。
三ヶ尻駅に向かって進むと、遠くにセメント工場の高い煙突が見えた。地図を睨みながら進んで線路の脇までたどり着いたけど、高い塀に囲まれていて中が見えなかった。
しかしそんなことは想定済み。各地に車両基地を撮りに行って、塀に阻まれることはこれまでに何度もあったので、秘密兵器を用意していた。それは脚立。
おそるおそる脚立の上に立って塀の中を覗くと、そこに見えたのは超インダストリアルな光景だった。
ここは文句なくかっこいい!中央の工場を挟むように右に左に線路が分岐していて、それぞれがいろいろな方向に伸びている。工場の中に入って行っている線路もあって、中はいったいどうなっているのかと思うと心臓が高鳴ってくる。
少しずつ場所を移動しながら、それでも覗いていた時間は20分程度だと思うけど、その間にも休むことなく青い機関車が行き来して、まるでパズルを解くように貨車をあちこちの線路に押し込んだり引っぱり出したりしていた。見ていて飽きない。
ここに運ばれてくる石炭は工場でセメントを生成する際の燃料となるものだけど、そのセメントの主原料である石灰石も貨物列車で運ばれてくる、と冒頭に書いた。ではそれはどこからか。
実は秩父鉄道の名前にもなっている秩父市は、石灰石の採掘が主要産業のひとつ。市内には大規模な鉱山がいくつもあって、秩父鉄道は旅客を運ぶほかに、その石灰石を運搬する重要な役割がある。つまり石灰石は石炭とは逆の方角からやってくるのだ。ならば石灰石を貨車に積み込む場所にも貨物駅があるはず。
というわけで、すかさず秩父方面に向かった。