乗り鉄、撮り鉄など、いろいろ細分化された鉄道趣味界に、駅めぐりというジャンルもある。特徴的な駅舎を観てまわったり、終点駅、秘境駅をめぐるなんてのも人気だ。
しかし、鉄道が運ぶのは人だけではなく、貨物もある。つまり僕たち一般人が乗り降りする駅だけでなく、貨物を積み降ろしする駅もあるわけだ。
そこで、貨物になった気分で駅を観てまわる、貨物駅めぐりをしてみよう。
(萩原 雅紀)
人は乗り降りできない駅
線路がたくさんある光景が好きで、少し前からそんな場所の写真を撮って歩いている。
ひとくちに線路がたくさんある場所、とは言っても、大規模な駅や電車の車両基地、機関車が休む機関区などいろいろあって、特に最近、なぜか惹かれるのが貨物駅だ。
貨物はいい。貨物列車や貨物駅はどきどきする。
あまり気に留めている人は多くないと思うけど、たとえば東京の近くにも貨物駅はたくさんあり、人知れず行き交う貨物列車が、毎日いろいろなものを運んでいる。
秩父鉄道の貨物駅をめぐる
ある日、僕は高崎線の熊谷駅の少し先にある、JR貨物の熊谷貨物ターミナル駅にやってきた。もちろん普通の電車は停まらない、貨物専用の駅だ。
ちょうど真上を道路が横切っていて、広い駅の敷地を見渡すことができる。貨物を積み込んだり降ろしたりする作業は行われていなかったけど、分岐しまくった線路の上に貨車がいくつか停まっていてかっこいい。
すぐ隣の線路には青い電気機関車が停まっていた。あれはJRではなくて、秩父鉄道というローカル私鉄の機関車だ。
そのまわりには石炭を運搬する貨車が。満載したものもあれば、空の貨車もあった。どうやら、ここではJRと秩父鉄道の間で貨物列車の受け渡しが行われているらしい。
JRの貨物駅かと思っていたら秩父鉄道の貨物列車がいたので驚いた。あとで調べたら、ここから出発して秩父鉄道本線に合流する貨物線が敷かれているらしい。それは知らなかった!
あと、貨車が積んでいる石炭はその途中にあるセメント工場で使われるもので、僕が去年見てまわった鶴見線の終点、扇町駅の奥で船から荷下ろしされて運ばれてきたものらしい。そうだったのか!あそこ、線路も錆びていたし雑草も生い茂っていて、てっきりもう使われていない線路なのかと思っていた。
川崎の港で荷揚げされた石炭が、扇町駅からJRによって熊谷貨物ターミナルまで運ばれ、ここで秩父鉄道に受け渡されてセメント工場に送られている。
まったく予想もしていなかったところで物の流れが見えてくると、がぜんこの貨物線に興味が湧いてきた。この線路沿いに、貨物列車の行く先に向かってみよう。