親友と会ってもぎこちなく
ソーセージである。 オシャレな店でのオシャレなフードイベント、そういうところにも割り込んでこられるソーセージの人気者っぷりが頼もしい。
パリッとした食感で包む皮の中身は、肉と一緒に香辛料がほどよく混ざったもの。さわやかなスパイシーが、肉のうまみと一緒に口の中に広がる。他の食べ物の描写が適当なのに、ソーセージだけはどうしても力が入る。あつあつなのもソーセージの実力を十分に引き出している。
湧いてきたのは、なじめないパーティーで旧友と出会ったようなうれしさ。おかわりに行くときも、「いやー、妻がもっと食べたいって言うもんだから…」と、虚偽のストーリーを 頭の中に描いて席を立つ。
ただ、食べている自分の写真を見ると、やはり心から解放されている風ではない。旧友との出会いに喜びつつも、やはり全体の雰囲気に押されているのは否めない。
「えー!?私まだ全然食べてないのに、またソーセージ全部食べちゃったの?ちょっと、もう一回おかわりもらってきてよ!」と、妻に言われたという嘘ストーリーと共に 再びおかわりに立つと、また別のものがあるのに気がついた。
イタリアの大麦を焙煎して作ったという飲み物、「オルゾ」。ローマ時代の剣闘士が戦う前に食べたと言われる古来大麦が原料であるそうだ。
淹れてもらってみた。カップに注がれるとコーヒーのようでもある。飲んでみよう。…うん、これは、オシャレな麦茶だね。バカっぽい感想で恐縮だが、浮かんできたのはそういう表現。食後のドリンクとして実にしっくり来た。
◆参考サイト L'APERITIVO TOKYO - アペリティーボ
※今後も2011年の4月まで、定期的にアペリティーボは行われるそうです。
このアペリティーボ、イベントとしてではなく時間帯限定のサービスとして取り入れている店も見つけた。上の店の翌日、早速足を運んでみた。
やってきたのはホテルニューオータニ。以前もらったここのリーフパイがびっくりするほどおいしかった 、という記憶が印象深く刻まれている高級ホテルだ。
青山のオシャレな店で打ちのめされたあとは、高級ホテルで別角度から責め立てられる。オシャレ食べ放題巡りとは、自分を崖っぷちに追い詰めるような試みでもある。
落ち着かないまま建物に入ったが、入り口付近にアペリティーボ実施中を知らせるポスター見つけてほっとする。ミラノでどうしたといった部分は軽く読み流して、「※アミューズ付き(一皿にお好きなだけ、お取りいただけます)」の部分を確認。
一回勝負の食べ放題、と解釈すればいいだろうか。でも、皿が醤油皿みたいな大きさだったらどうしよう。高く積むことで勝負すればいいのだろうか。
店に入る前からこの葛藤。アペリティーボを行っているのは「ザ・バー」という店だ。
40階にあるその店は、かなり大人ムード漂う雰囲気。さすがに高級ホテルの高層階のバー、この店で一杯飲んだらサイゼリヤ行こうとか思ってる場合じゃない。
通された席の隣のテーブルは外国人客。メニューも英語なので、受験時代の知識を呼び戻して読む。
読み解いたところによると、アペリティーボは25種類の中からワンドリンク、そして一皿に好きなだけ盛れるアミューズとで900円。さらに、目の前にはこの景色がついてくる。
高層ビルに囲まれた光の河を遡っていくと、そこに見えるのは東京タワー。まずいこのムード、うっかり飲まれるぞ。
今回は予約しての来訪。予約客には3組限定で窓際の席を確約してくれるのだ。このシチュエーションにドリンクとこじゃれおつまみとでこの価格というのは、かなりお得ではないだろうか。