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フェティッシュの火曜日
 
会社辞めます!そんな告白シチュエーション


説得というより監禁!しかし移った先も…。

二人目に話を聞いたのはライターの増田不三雄さん。つい先日『社内失業−企業に捨てられた正社員』(双葉新書)を上梓されたばかりで、今回のテーマで話を聞かせて頂く人を探してる時に知人の編集者から紹介していただいた。

『社内失業』は、文字通り一般企業に就職したものの真っ当な業務を与えられずスキルを磨く機会もなく、ただ不安に押しつぶされそうな中で単純作業などをやらされる、文字通りの社内において失業状態の人々へのインタビューとデータから今の企業の問題に切り込んだ一冊。その増田さんもまた現在「社内失業」状態なひとりだ。「えー、何もしなくてお金もらえていいじゃーん」て人は増田さんのブログを読むといいよ!その状況が超怖くなるよ!


非常に刺激的な本です。窓際族とは似てるようで違う。

今回うかがったのは社内失業状態である今勤めている会社に入る前のお話。今の「勤めてるんだけど仕事がない」状況からすると、まったく逆だったようで。

「前はIT系にいたんですけど、とにかく業務が長くてキツかったんですよ、体力的に。毎日朝10時から終電までとか。新卒で入って、丸2年くらいですね」

−−辞める決定的なきっかけってありました?

「チームで企業サイトを作ってたんですけど、別チームの人が抜けちゃってその仕事が丸ごと自分に乗っかってきちゃったんです。それがハンパない量で。それが終わったら辞めよう、と思ったのがきっかけですね。それで会社に行きながら就活もしてたんですけど、新しい仕事を任されそうになったので慌てて辞めることにしました」

−−途中で放っぽらかすよりは、最初からいない方がいいですもんね。

「そうなんですよ。それでその前からチームリーダーには軽く相談はしてたんですけど、社長に会議室に呼ばれまして」


会社を辞める時のひとつの障害とも言えるのが「情」。やっぱり周りに迷惑かけたくないというのは皆あるはず。それを考えてもタイミング的にはよくわかる。

しかし転職先が決まってないというのがあってか、増田さんは社長から大変というか面倒な追求に合うことに。


「会議室に呼ばれて、5時間くらいマンツーマンで話されまして。ホワイトボードに図とか書かれて…」

−−5時間!それは辞めないための説得、ですよね?

「だと思います。ホワイトボードに人生の流れみたいなの書かれて、過去の話からさんざん聞いてくるんですよ。それで『中学の時の剣道の試合でレギュラーから落ちたのはいろんなことから逃げてきたからだろ』とか『今回も逃げたらお前はホームレスになるしかない』とか」

−−すごい!

「『その時お前は一生懸命練習したのか!』『それは胸貼っていえるのか!』って言ってきて、『そんなことはないですけど…』って返すと『じゃあ逃げたんだ!』って」

−−男の「逃げる」って言葉に対する敏感さをうまく使ってるな〜。

「もう最初は辞めます辞めます、って感じだったのが4時間くらい経つともう朦朧としてきて…洗脳に近いと思いますね」

−−なんか論法としてあるんですかね?

「この本(『社内失業』)を書くときに知ったんですけど、人を辞めさせる時に過去をさかのぼって『お前はアレもコレもダメだから辞めろ』ってのがあるのを知ったんですよ。その逆バージョンをやられた感じでしたね」

−−5時間の最後はどんな感じで〆だったんですか?

「その日は自分でももう『辞めます』って言ってたのが『考えさせてください』に変わってきちゃってて。それで翌日続きを、ってなりましたね。でもあらためて『こんな追いつめる会社どうなんだ?』って思って、翌日『辞めます!』と」


5時間はハードだよなあ。自分だったら「もういいよ!やりゃいいんでしょ!やりゃ!」とキレてしまいそうだ…。ある意味それ待ちだったのかもしれないけど。しかし増田さんは耐えた!

−−しかしその社長は毎回人が辞める度にそんなことしてたんですかね?

「前の同期が辞める時も同じことやってたらしいんですけど、結局辞めてます。効果ないんじゃないですかね?」

−−早く気づけよって話ですな。

「自分の場合は次の仕事が決まってなかったんで、もしかして辞めれるかも?ってのもあったんじゃないですかね」

−−あ、なるほど。ちなみにそれから次の展開は?

「3月頭に次の職場決まったんですよ。だから4月1日からは新職場に行けることになって」

−−でも、そこで「社内失業」するんですよね…。

「そうなんですよ。極端に仕事があるところと無いところを経験させられてる感じで」

−−入社しないと分からないとはいえ、ホント極端ですよねえ。

「しかも前居た会社って残業代も出なかったんですけど、業績は良かったんです。それで僕が辞めてから上場したんですよね。いろいろ厳しくなって残業しちゃいけないとか規則が出来たんですよ。だから僕一番悪い時期にいて辞めちゃったんですよね…」


なんというバッドタイミング…。就職・転職も運が大事とはいえ、ここまで極端だと泣ける!

辞める教訓:

5時間でも耐えろ


本人は今も社内失業中なので顔は出せません。

先の工藤さんが付き合いはじめの告白だとしたら、こちらは別れ際の修羅場のようだ…。入社だともっとシステマチックでこういう恋愛っぽさはそれほど感じないのにねえ。

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