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フェティッシュの火曜日
 
会社辞めます!そんな告白シチュエーション


昔に比べると転職は普通になった。でも会社を辞める「理由」は体調不良やステップアップなどだいたい似通っているけども、会社を辞める事を切り出すシチュエーションは人それぞれ。そしてその話を切り出すタイミングがまた難しい。自分も以前勤めていた会社を辞めるとき大変だった覚えがあるけど、他の人はどんな流れで辞めることを伝えたんだろうか?入社は分かりやすいけど、退社って皆どんなもんなんだろ…ということで何人かに聞いてみました。

ちなみに会社員がお昼休みに読むサイトとしてご好評をいただいてるデイリーポータルZですが、今回ばかりはあんまりおすすめしません。いやホント。

大坪ケムタ



告白タイミングは恋愛ばりに難しい

ちなみに自分もライターになる前は地方の広告代理店の営業をしてました。だいたい4年くらい勤務して、俺ら東京さ行ぐだ!と転職を決意。今その時のことを思い出すと「どう上司に切り出すか」でけっこう悩んだ気がする。社内でさらっと言う話じゃないしねえ。

ドラマなんかで「課長、お話が…」なんてセリフがよくあるけど、この時くらいしか使ったことないよ。そんな隠密な言葉。ひとりでインタビュー風にその時を思い返してみると。


「まず上司に言わなきゃ、と思ったんだけどなかなかタイミングがないんだよね。それで『課長、ちょっと飲みに行かないですか?』って」

−−サラリーマンらしい腹割って話すモードで。

「それまで課長とサシ飲みなんてしたことなかったんだけどね」

−−明らかに何か勘づくよソレ!悩みあるか、辞めるか。

「緊張したな〜。気になる子デート誘うようなもんだもん。告白するわけだし」

−−告白違いだけど。まあ勇気いるのは一緒だ。

「それで飲みに行ったんだけど、課長が一方的に喋ってねえ。『大坪がこれからウチの会社を背負わなきゃいかんぞ!』とかなんとか。コッチの話切り出すムードじゃなくて、どんどん気まずくなってって」

−−それは勘づいてたのかなあ。

「うーん。『辞める』ってのは(発想に)無かったと思うけど。自分自身も仕事がツラくて辞めるじゃなくて、次にやりたい事があったから辞める、だったし」

−−で、最終的に言ったの?

「一時間くらいたっぷり励まされたところに、『課長、そうおっしゃっていただくのは大変ありがたいんですが…実は会社辞めたいんですけど』って言ったねえ」

−−課長に一時間喋らせ損だよ!


当時着てたスーツはその後約10年間、1度も着てない…。

自分の場合は広告代理店という比較的転職の多い職種で馴れてた+次の職場が決まっていたので、多少引き留められつつも比較的スンナリ辞められた方だと思います。

自分に限らず「2人の場」を作るのが結構大事だと思うんですが、そのシチュエーションが面白かったのがデイリーポータルZ編集部の工藤さん。これまで4回会社を辞めているというプロ辞めター!その中でも印象的な告白シチュエーションをうかがいました。


「一番最初に勤めたところの話なんですけど、印刷工になりたくてそういう会社に入ったんですよ。20人くらいの小さいワンマン企業なんですけどね」

−−ふむふむ。

「待遇良くはしてくれて、会長さんがスーツ買ってくれたりするんだけど、社員が家の掃除に行かなきゃいけなかったりして、会社に愛情が湧く感じでもないんです。それで『こりゃダメだな』って思って、2年くらいいた所で辞めようと思ったんですよ。それで『会社の辞め方』みたいな本を買って」

−−まずはマニュアルからだと。

「そうそう。『周りの同僚には言うな』『直接の上司に言え』とか書かれてあって。でも小さい会社だから、直接社長と営業回ったりする機会が多かったんですよ。それで『一緒に行こうよ』って誘われた時に、『言うなら今日だな』って思って」

−−言うしかない!と。

「それで僕が車運転してる時に『すいません、お話があるんですけど』って言ったら、『だいたいどんな話かわかるけども』って」


意外とマニュアル派な工藤さん。

ある意味、恋愛と退職の告白タイミングは近いのかもしれない。悶々としながら機会を狙い、時に「やるなら今しかねえ!」てのがやってくる。そして相手もそれなりに気づいてたりもする。

しかし、退職の告白がホントに恋愛チックだと困る。とても困る!


「『どうしても今日話するか?』って言うから『お願いします』って言って、どこかコーヒーでも飲みながら…ということになったんです」

−−やっぱり会社じゃね、と。

「で、ちょうどそのころ近くにタワーのあるホテルが出来たんですよ。夜景が見えるスポットで人気だったんですけど、せっかくだからそこに行くことになって。それでエレベーターで上まで昇って、レストラン着いたらウェイターに『お二人様ですか?夜景の見える席が空いておりますが』って言われたんですよ」

−−男ふたりに。

「それに社長が『はい』って言っちゃって。それで通されたのが、2人掛けのソファーが夜景の見えるガラスに向けて置いてある、いわゆるカップルシート」

−−アハハハ!空気読めよ、ウェイターも!

「ぴったり2人寄り添って座るみたいな席で。時間も夕暮れから暗くなってく最高の時間なんですよ」

−−告白違いって感じですね。

「それで世間話してから『実は話ってのは辞めさせてほしい』って切り出して。それで理由を聞かれたんですけど、その時は荒唐無稽な理由がいいと思って、留学したいってウソついたんですよ」

−−理由大事ですよねー。

「する気もないんですけど。それでだんだん外が暗くなって、ガラスにふたりの顔が写るんです。窓に映る自分を見て、僕は何をやってるんだろうなって…」

−−いらないムード感が!

「それで社長も『君の未来があるんだから止めることは出来ない。でも一回だけ考え直して』言ってきたんですけど、こっちは『さんざん考えた結果なんで…』と」

−−ちょっと別れ話っぽいなあ、そのくだり。

「あとその後になぜかケーキ頼んだんですよ。ご飯食べるほど腹減ってないし、『ケーキでも食べるか!』って」

−−スイーツな退職でしたねえ。


インタビュー中も男2人だけどそんなスイーツな雰囲気は皆無。当たり前だ。

それから2ヶ月後には工藤さんは同社を退社。恋愛の告白も退職の告白もそれなりの勇気と決意が必要です、というと謎かけみたいですが、ここまで雰囲気が被るとむしろシュールすぎる!コントか。

辞め告白の教訓:

ムードが良すぎてもいいけど

告白の場所は選びたい


さて続いては、辞めシチュエーションもすごいけど、辞めたのにさらにひどい?状態になった方から聞いたお話。君は5時間耐えられるか?

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