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はっけんの水曜日
 
自分専用ヘアカタログを作りたい


 

昔から床屋で髪型を注文するのが苦手である。

席に座って「どうしますか?」と聞かれても、どういう風に伝えたらいいのかわからないし、根本的にどうしたいかという希望がない。

そんな人は多いようで、スーパー銭湯に併設されている床屋に、同じ人が何種類もの髪型をしているヘアカタログから選ぶというシステムがあった。

この中から好みの髪型を指定するというシステムは合理的だが、いかんせんモデルの顔が私と違う。そこで私がモデルの自分専用ヘアカタログをつくることにした。

玉置 豊



床屋じゃなくて美容室にやってきた

この企画でキーとなるのが、協力してくれる店の存在。だが残念ながら知り合いに床屋さんはいない。もちろんよくいく床屋というものは存在しているのだが、極力会話をしないようにしているので、こういう面倒なことを頼めるような関係ではない。

そこでなんとなく人づてに探していたら、協力してくれる奇特なお店が見つかったのだが、そこは赤と青のポールが回る床屋ではなくて、b.port というオシャレな美容室だった。場所が原宿とかだったらおっかないので断ったけれど、埼玉県越谷市なのでここにお願いをしよう。


床屋しかきたことがないので、誰かの紹介じゃなかったら絶対に来ないな。
店長が元プロボクサーと聞いていたので、必要以上にドキドキしている。

世の中には理容室(床屋)と美容室というものがあって、理容室は男性用、美容室は女性用という固定観念が自分の中にあり、今まで一度も美容室というところにきたことがなかった。美容室に行く男性がいるのは知っているが、それは私と別のグループの人種。

で、初めての美容室が自分専用ヘアカタログ作り。何様だ。

店長はそんな私に対して、貴重な定休日をつぶして対応してくれた。たぶん依頼が人づてだったので、取材内容がいいように伝わっていたのだろう。


一応この店にあるヘアカタログを見せてもらった。
うん、顔の造形がまったく違うし、髪質も異なる。第一こんな髪型は自分で再現できない。

髪を少しずつ短くしていきます

今日の作戦は、前に切ってから二ヶ月以上ほったらかしにした状態から少しずつ切っては写真を撮って、自分が何種類もの髪型になったヘアカタログをつくるというもの。

映画のロッキーは撮影時間短縮のために最終ラウンドのボコボコになった状態のメイクから撮影を始め、だんだんとメイクを落としてシーンを遡りながら撮影したという。この話は特に関係ないな。

ヘアカタログを作るのは大変だが(主に切る人が)、これが完成すれば今後はこのカタログを店に持って、「これにしてください」とか「これよりちょっとサイドを長く」とかいえば、完璧な注文ができるはずだ。

カタログを出すことの恥ずかしさは置いておいて。


この日のために伸ばしてきたというよりは、単純に床屋にいくのを先延ばしにしていた。
パーマは100%天然。ひと月前にビゲンで白髪を染めた。

 

美容室って新鮮

とりあえず席に通されて驚いたのが、美容室ってシャンプー台がないんだね。前にいった1000円カットの店もシャンプー台はなかったけれど、あそこはシャンプーというものがない。

そういえば美容室はお化粧が落ちないように仰向けで髪を洗うという噂を聞いたことがあったが、店の奥の見たことのない仰向けのシャンプー台で実際に体験してみると、歯医者にきたみたいで新鮮だった。

そして床屋だと霧吹きでシュッシュとやって切ってからシャンプーなので(そうじゃない場合もあるけど)、切る前のシャンプーというのも新しい。

「髪を切ってもらう」という生まれてきてからずっとやってきていることなのに、理容室と美容室でここまで違うのかと、今回の取材の本筋以外で驚きっぱなしである。


とりあえずどうしていくかミーティング。シャンプー台がないので目の前がスカスカしている感じがする。
この店は奥の個室でシャンプーする方式。丁寧なシャンプーをしてくれたのは店長の奥さん。

基本的にはお客さんと話しながら髪型を決めていくスタイルなので、ヘアカタログはあまり使わないそうです。
初めての来店だと問診票みたいなのを書くのも歯医者っぽい。「話すのは好きな方ですか?」という項目があったので、「苦手」に丸をつけた。

 

最初の髪型が完成

とりあえず最初なので、あまり長さは変えずに軽くしていきましょうということなのだが、「伸びた時に綺麗な形になる」という理由で、すきバサミを使わずに普通のハサミだけで器用にボリュームを減らしていく。サクサクサク。盆栽気分。

元巨人の清原選手の坊主頭はバリカンではなくてハサミで切っているという話を聞いたときに、バリカンでいいじゃんと思ったが、今なら清原選手の気持ちがよくわかる。なんだか切られるのが楽しい。


店長に「私も同じくらいの天パーですよ!」といわれたので、すべてを任せようと思った。
美容師は剃刀を使えないそうなので、えりあしはバリカンで処理。

そして完成した髪型が以下の写真である。

撮影係としてきてくれた工藤さんが「ずいぶん若返りましたね!」と驚いていた。


なるほど、確かに髪が軽くなった。
もし悪い報道をされることがあったら、今回の記事の写真が使われるんだろうなと思った。

さっぱりして大変満足。たまには美容室もいいものだ。

この記事のタイトルが「はじめての美容室」だったらこれでおしまいなのだが(それでもいいかなと正直思った)、今回はこれがはじまりなのである。


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