デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


はっけんの水曜日
 
鬼が花火を持って舞う夜祭り


子供も大人も

ステージが進むにつれて、境内はぞくぞくと地元の人たちで埋まってゆく。


こどもたちはかぶりつき

僕は北海道出身で、そういう文化がないので「神楽」というと、趣味人のおじいさんおばあさんたちが行儀よく鑑賞するもの、というイメージを持っていたのだが、ここでは子供たちが舞台にかぶりついて、ときには衣装の裾を引っ張ったりしながら楽しんでいる。

このあたりの子供はピカチュウごっことか何とか戦隊ごっこじゃなくて神楽を舞って遊ぶそうだ。
確かにいわれてみれば勧善懲悪のストーリーだから、きっと彼らは僕が子供の頃ゴレンジャーショーを見ていたような感覚で、神楽を見ているんだそう。


ステージ脇にも客席がある
猿がお菓子をまくという演出も

演目は進む

本当だとすべての演目を紹介したいところなんだけれど、そうするとあと8ページくらい記事が続いてしまいそうなので、残念ながら割愛するが、一つ一つがどれもおもしろい。
もちろん、火が出たり鬼が出たり派手な演目もあれば、そうじゃないものもあるのだが、どちらも見とれてしまうほどたのしい。


きりっと締まった面

糸の中をくるくると舞う
舞い手もイケメン

恵比寿もかわいい
ええいや!

若者もたくさん

子供たちもたくさん来ているのだが、十代前半から二十代の、青春まっただ中の若者たちもたくさんいた。
東京だとそれくらいの若者が「神楽見にいかネ?」ということはまずあり得ないが、ここでは若者たちが、それこそ片手で携帯をいじりながら神楽を見ているのだ。
そういうと、都会のいじわるな人は「ほかに遊びに行くところがないから」なんて思うかもしれないが、僕はそれだけじゃないと思う。
だって、たのしいんだもん。
もしこの石見神楽が、たとえば下北沢あたりの神社でやっていたら、同じように若者たちが集まるに違いないだろう。


俺も近くで見たい
神楽を見ずに愛をはぐくむ若者も

飲みたいな

今回は取材ということで、お酒を飲まなかったのだが、境内にはぷーんと何ともいえないお酒の匂いがただよっている。
周りの大人はみんなカップに入ったお酒や焼酎を酌み交わしながら、神楽を楽しんでいる。
僕は飲んじゃうと取材なんかどうでもよくなってしまうたちなので控えたが、祭り本来の雰囲気を忠実にリポートするためには、郷に入らば郷に従えということで、飲んでおけばよかったと、今になって後悔している。
今度行くときは飲もう。


焼き鳥焼きそば大人気
舞い手も出番のない時は火に当たる

衣装早変わり

舞台では、「天神」という演目がはじまった。
これは僕が今日いちばん楽しみにしていた舞で、くるくると回っているうちにすごい早さで衣装がどんどんと変わってゆくのだ。
しかもどんどん豪華絢爛になってゆくという、ハイスピード小林幸子みたいな演目だ。


黒い衣装が
赤と青になり

さらに鎧姿にかわってゆく
目にもとまらぬ早業だ

えいや!

大人気の大蛇(おろち)

神楽殿前に人が集まってきたな、と思ったら、石見神楽でも一番人気の演目「大蛇」がはじまった。
巨大なオロチがものすごい勢いでくるくると回る、見ていて圧倒されてしまうような演目だ。
このオロチは掃除機のホースを大きくしたみたいな、E.T.を捕獲にきた研究者が使っていたような(例えがわかりにくくなったな)ものでできていて、それが軽業のように舞台の上で舞う。


スサノオが大蛇退治に挑む
大蛇現る
ぐるぐると舞台からはみ出して大蛇が舞う
成敗してくれるわ
うちとったり!
その首を子供がかってに持ってっちゃう

火を噴く鬼

つづいては「塵輪」という演目で、鬼が2匹に神(正義の味方)2人で舞う。
ここでまた火を噴く鬼が登場だ。


弓を持った神が
舞っていると
ぐおー

いやー
えいや

とあー
やー!

深夜2時の鬼

さすがに11月の深夜、夢中で見ていても芯から寒い。
幕間にたき火に当たりながら時計を見ると、すでに深夜2時をまわっていた。
数こそ減ったが子供たちは半分うとうとしながら舞を見ている。
こんな時間に鬼が花火を持って出てくるんだから、そりゃ眠くてもがまんしているだろう。
でももうすぐ終わりだ。
名残惜しいが今日最後の演目は「黒塚」。
喜劇仕立てで、演者が漫才のようなセリフをしゃべりながらストーリーが進んでゆく(石見弁なので7割くらいしか理解できなかったが)。


この演目を楽しみにしている人も多く、特に大人はかぶりつきてみながら笑っていた
客席の人が悪狐にやられて客席は沸く


暖かくして見にいってください

いやはや楽しかった。
途中で何度も「もう写真撮るのやめてちゃんと見よう」と思ったのだが、それくらいたのしかった。
神社で奉納される以外にも、温泉施設や観光施設でも石見神楽を見られるのだが、僕はまた神社で楽しみたいと思う。
もし行かれる方は、寒さ対策を万全にして行くといいと思います。

・石見神楽(浜田市HP)
・石見神楽公演日程(浜田市HP)


取材協力
美川西神楽保存会
石見神楽面 柿田面工房

まつりのあと

< もどる ▽この記事のトップへ  

 
 

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.