デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


ロマンの木曜日
 
ハサミで料理、一週間

五日目:アジフライ

今回、せっかく一週間料理を続けるのだから、ぜひともやっておきたい食材がある。それは、魚だ。

正直言うと、私はこれまで29年ばかりの人生で、魚をさばいた記憶が無い。小学校の調理実習でやったかもしれないが、それも定かではない。たとえ調理実習で魚を扱っていたとしても、おそらく魚を実際にさばいたのは、同じ班の別の人だったのではないだろうか。料理が得意な女子とか。

要するに、私は魚のさばき方に関して、右も左もさっぱりな状態なのだ。しかし、だからこそ、挑戦する価値がある。今、魚のさばき方を学んでおけば、将来、魚をさばかなくては命の危険に関わる、などという時にも問題なく対処できるだろう。

とは言うものの、やはり大きな魚ではいささか敷居が高いと言わざるを得ない。ここは、割と大雑把な調理であっても何とかなるであろう、アジを調理したいと思う。アジの料理と言えば……そう、アジフライだ。


いつ見ても、魚の目というものは、ちょっと怖い

う〜む、こうやって魚と対峙すると、やはりちょっとおっかない感じがする。どう触れば良いのか、どこから手を付ければ良いのか、分からない。焦るあまり、額から汗が溢れ出る。しかし、もう後に引く事はできない。やるしかない。

恐る恐る、一匹のアジをその手に取り、開き方をメモしたアンチョコの通り、その体にハサミを突き入れる。


腹のヒレを切って、横のゴリゴリ部分を剥ぎ取る
首根っこにハサミを入れて、ゴキャっとやる。南無三!

そのまま首を腹の方へ引っ張ると、簡単に内臓が取れた
背中からハサミを入れ、背骨に沿って開く

こ、こんな感じで良い……のかな?
とりあえず、6匹やっつけました

いやはや、やればなんとかなるものだ。しかし、やはり野菜を切るのとはワケが違う。姿形が残る動物から、食材の形へと解体するのは、なかなかにしんどい仕事である。顔がこわばり、どこか目がうつろなのは、その為だ。

さて、作業を開始してから一時間半。アジを六匹開いただけで、これまでの平均調理時間を超したわけだが、まだこれから、アジを揚げるという工程が残されている。……というか、むしろそれが本番だ。

小麦粉と卵とパン粉を用意して、揚げに取り掛かる。ちなみに、パン粉は冷凍した食パンをミキサーで砕いて作った。市販のパン粉とか買っても、絶対に使い切れないので。


小麦粉をまぶして溶き卵にくぐらせ
パン粉をまぶして……おぉ、テレビとかで見た調理光景だ

あとは揚げるだけ……
って、あっという間にコゲコゲ。温度が高すぎたのか?

アジをフライパンに入れた途端、物凄い勢いでアジは揚がってしまった。慌てて救出してやるものの、時既に遅し。アジフライはハンバーグのような色になってしまっていた。

う〜ん、これは、油の温度が問題だったのだろうか。もっと、火を弱めておくべきだったのか。油の温度など、これまでの私には無かった新概念だ。揚げ物って、むつかしいね。

そう言えば「最強伝説黒沢」という、独身中年男の哀歌をつづった漫画では、アジフライはハートの形をしている、と主人公がのたまっていた。ほほう、ハートの形とな。どれどれ、我がアジフライは、いかなる形を成すものか。


わ、割れている!

なんということだろう。私のハートは哀れにも、中央からパッキリと割れてしまっていた。

アジを開くのがうまくいっておらず、身が崩れてしまったのが原因だろうか。やはり、包丁でスパッではなく、ハサミでジャギジャギ背骨を切り取ったのがまずかったのだろうか。

いやはや、なんともトホホな感じになってしまったが、まぁ、料理の真価は見た目よりもむしろ味だ。目ではなく、舌で楽しむのが料理の本質なのだ。


澄まし汁は、溶き卵の余りを落として作りました

味は、しっかりアジフライのそれ。でもちょっと苦い
しかし、アジ六匹って結構きついな

 

六日目:大根と人参の煮物

残すところ、あと二日となった。今回は、根菜をベースにした煮物を作ってみようと思う。

これまでの食材よりも固い大根や人参。それらにハサミでどこまで太刀打ちできるのか、確かめてみたかったのだ。


具は大根と人参、あとこんにゃく
シイタケとコンブでダシを取る

大根は……おぉ、結構ザクザク切れる
片刃のみを動かすことで、皮もむける

ところが人参は、固くて切れ目が少ししか入らない
力ずくで切ったものの、断面がグズグズ

力任せにハサミを握ったので、手も痛い
何とか皮もむけるが……正直、オススメはできない

さすがは根菜というか何というか、やはりこれらの食材は、ハサミで切るにはちときつい。

特に人参の固さは大したもので、ハサミではほとんど刃が入らなかった。刃を力いっぱい当て、何度も回転させるようにゴリゴリと削る事で、ようやく切断することができるという感じだ。おまけに切断面もグズグズだし、できることなら、ハサミで人参を切るのはやめた方が無難であろう。

ところで、人参の煮物といえば、一つ試してみたい事がある。それは、飾り切りだ。弁当などで、ちょこんと添えられていると何とも嬉しい存在のアレ。人参を梅の花の形に切る、ねじり梅の飾り切りをやってみたいと思う。



ハサミは、こういう細かな作業に向くのかもしれない
不細工だけど、一応できた、ねじり梅

うむ、とりあえずそれらしい形になった。

サンプルの画像などとは見比べると、目も当てられないようないびつな形ではあるが、だが、まぁ、それは私の不器用さによるものなので、あまり気にしないでいただきたい。

続いてこんにゃくを切るのだが、こちらもただ切るだけでなく、一手間加えてねじりこんにゃくにしてみたい。こういった小細工でなんとかごまかし、少しでも見た目を良くするのだ。



根菜と違って、驚くほどスパスパ切れる</font>
切ったこんにゃくに切れ目を入れて……

くるんとくぐらせれば、おぉ、ねじれた
こりゃ簡単、簡単って、……あ、切れた

何はともあれ、切った材料をダシ汁で煮込む
醤油やらなんやらで味をつけて、出来上がり

ちょっと、煮物の色が濃すぎるかな

どうも醤油が多すぎたようで、煮物の色がかなり濃くなってしまった。おまけに粗い切断面が悪さしたのか、大根にかなりの色ムラが見られる。

でもまぁ、全体的に見る感じではそれほど悪いものでもない。味も結構期待できるのではないだろうか。さぁ、いただこう。


う、うん。やっぱり、ちょっとしょっぱかった
特に、表面積が広いからか、ねじり梅は酷く辛かった

< もどる ▽この記事のトップへ つぎへ >
 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.