心ゆくまま取り返しの付かないことを

「取り返しの付かないこと」の片鱗を掴みかけた僕は、他にもこれはと思うものにチャレンジした。

例えば、何かの技術が発達したらデータが取り出せるかもしれない…と大事にしまっておいた故障ハードディスクに磁石をくっつけるという神をも恐れぬ蛮行をしたり…

ジョークタスキをかけておちゃらけてみたりしたが、自分でもだんだんワケが分からなくなってきただけになってきた。

いったい何が「取り返しのつかないこと」なのだろうか。ちょっと違う気がした。掴みかけた片鱗はあっさりと手放してしまった。どうして僕はこんな格好をしているのだろうか。

なぜ僕は土手に…？

お金にまつわること

分からなくなってきたので、土手を離れて歩いていたら、こんなものがあった。ローン申込機だ。

そういえば「取り返しのつかないこと」といったら、お金が関連するエピソードというものがあるのも容易に想像出来る。僕はこういうのにお世話になったことはないので、ものは試しとちょっと見てみることに。

300万円まで借りられるらしい。年利は１８％までだそうだ。

見てるだけでドキドキする。僕はお金の管理とか苦手なので（そもそも管理するほどお金が無いが）、もう取り返しがつかなくなりそうな匂いがプンプンする。

CMなどでは「ご利用は計画的に」とよく言っているけど、まったく無計画に限界の３００万円まで借りたらどうなるのだろう。どうなってしまうというのだろう。

ちょっとだけ個室の扉を開けてみると、中はガンガンにクーラーが効いていた。外は蒸し暑く過ごしづらい陽気なので、この冷気は僕を誘っているかのようだった。

「取り返しのつかないこと」はこの感覚だ。怖いけど誘われている感じ。非常ベルのボタンとよく似ている。

ここで試す勇気はなかったので、足早に立ち去った。借りても使い道がないですし。

キャパシティを超えた募金

さて最後に、募金箱を求めてコンビニにやってきた。セブンイレブンではみどりの募金というのをやっているそうだ。

先程の「お金にまつわる取り返しのつかないこと」をヒントに、自分の善意の限度を超えた募金というのはどうだろうと思ったのだ。一度募金箱に入れたお金は帰ってこない。

正直に言って、僕の募金の限度額は１００円だ。それも相当気分が良いとき（世界が輝いて見えるくらい）で、尚且つ財布に１００円玉があるとき、というような条件が揃わないと無理な額。

間違えて１００円募金したときのショックは大きい。気軽に出せるのは１０円までだろう。むしろ、一度だけ５００円募金した経験があるというのが僕の小さな自慢だ。

なんと今回はそれを大きく上回る１０００円に挑戦する。

手につまんでいる１０００円札をを募金箱に入れたら後悔するだろうか。するだろうな。だって入れたらもう取り出せないもんな。

でも１０００円募金するのって気持ちいいかもな。だって、募金箱に１０００円入れる人ってあんまりいなさそうだし。人がやったことないことをするのは、気持よさそうだな……

ぱさ。

僕は取り返しのつかないドキドキ感と、緑豊かな地球を同時に手に入れたのだ。