デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


フェティッシュの火曜日
 
幻のラーメンを追って

こっちの張り紙の「幻」がものすごく小さいのもそういうことなのだ

幻を復元する

「お味どないでしたか?」と中からお父さんが出てきた。

「これ限定20食いうことでやらしてもらってますねん。」ああ、ホッとした。幻の理由がちゃんとあった。

お母さんがラクラクと一線超えてきた瞬間に「幻」を出す店、「幻」を追う私、「幻」を読むあなた、この三者の「幻なんて結局名前だけなんだろうけど、まあ洒落ですやんか」のダムが決壊した。

ダム、修復完了。修復、完了いたしました!


ここにもラーメンはあるが「千手ラーメン」と名前がついている

幻のラーメンのこと

お父さんが来たのでなぜ幻のラーメンのあとで幻の牛汁を始めたのかも聞いた。

まず、この赤目四十八滝には二つの茶店があって、同時期に営業されていた。そして幻のラーメンは口コミで拡がったのかメディアに紹介されたからなのか、けっこう人気があったそうだ。

「うちのラーメンとそないちがうもんやないと思うねんけど」というが、幻の力は強かった。千手ラーメンが幻のラーメンでないとわかると、ほなええわ、と帰る幻目当てのお客さんもいるくらいだったという。


幻のラーメンとそれほどちがわないであろうと思われる「千手ラーメン」がこちら。パッと見、普通だが、その感覚はもう慣れた。

幻を継ぐもの

同じような茶店を営んでいるのに、幻強し。私たちが「洒落でつけてんでしょ」と思ってるくらいだが、その「洒落」ってけっこう営業成績いいのだ。

お父さんの中に「幻」を受け継ぎたいという気持ちが芽生えて、しかしラーメンをそのままやるわけにもいかないから、新しくできた牛汁に継承させていただいた、という。


あ、千手ラーメンもうまいっすよ。オーソドックスな味で。

限定20食というちゃんと見える幻

しかし「幻」=洒落、としてきたが限定20食というのもちゃんとした幻だ。そもそもこんな山の中にどうやって食材持ってくるの?と聞いてみたら、全部背負子で運んでいるという。


「これで30kgくらい背負って持ってくるんよ」
お母さんその左手側にあるのん何?
「これ?これ手袋ささったあんな」
ふ〜ん。

外で食う飯はうまい×山頂のおにぎり感=うまい

「さっきも女の子4人くらいで来やって、牛汁食べてんけど、まだちょっと足らんいうてラーメンも食べていきやったよ。おばちゃん、おいしいわ〜、って言うてたで。」

こんなお母さんが30kg背負ってここまで来たらそら何か美味くなってるだろうな、という気もしてくる。そして、山帰りの身だったらもっと美味しくなっていただろう。なんとなく、合点もいったような気がした。


赤目四十八滝の茶店・千手茶屋のお父さんとお母さん
幻の牛汁がその日やってるかどうか確かめる際は、赤目保勝会まで電話して聞いてください(0595-63-3004)、とのことです。

幻のラーメンの足跡を追う

なんとなく幻のラーメンがどんなものであったかわかった気もしたが、ここまで追い求めた以上、どんなものだったか一応知っておきたい。

幸いにも知人の一人が地元が近く、幻のラーメンを食べていたのだ。


Barに呼び出して「幻のラーメンがどんなものであったか」を聞くと、とたんにいいもののように思えてきた

その味は幻になっていた

学生時代の先輩である山崎さんが幻のラーメンを食べたのは7年前。私がその存在を教えたところ興味を持って食べに行ってたそうだ。幻のラーメンのこと何かおぼえていますか?

「4人くらいで行って、幻のラーメンありますか?って聞いたら、店のおっちゃんがうれしそうに『幻のラーメン?あるかな〜?』って言っててちょっとイラッとしたんは覚えてるわ。」

7年前はブレイク前だったのだろうか。注文したらおっちゃんがちょっと驚いてた、とも言っていた。で、肝心の味の方なんですが…

「う〜ん…まったく思い出されへんわ。全く記憶にない。記憶に残らない味ってことでええかなあ?」

ああ、幻のラーメンの味は幻だった、ということでなんとかまとまりそうです。そして、その幻のラーメンの写真がこちら。


これが7年探し求めていた幻のラーメン


そしてこれが千手ラーメン。ここまで一緒だとは。

「川のその辺に春菜愛ちゃんが来てオオサンショウウオ見つけとったで〜」春菜愛がオオサンショウウオと格闘する赤目。

伊賀の幻騒動

「幻のラーメン」で検索すると、ここ以外にもちらほら出てくる。昔作られていたあの味を再現いたしました!みたいなことが書いてある。うん、それは正しい「幻のラーメン」だ。

たぶんそういうのとはちがうんだろうね、と7年に渡って探し求めていた幻のラーメン。実物を食べてはいないのだから、その真相のほんとのほんとのところはわからずじまいだったが、多分、そういうことなんだろうというのは見えた。

そして、幻の牛汁。牛汁を知らんのに、さらに幻。こらもうえらいことになっている。そういうのひっくるめて僕はけっこう好きである。


< もどる ▽この記事のトップへ  

 
 

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.