(斎藤 充博)
サッポロ一番が好き過ぎて気づいてなかった
僕の好きなインスタントラーメンはサッポロ一番だ。 そして、たぶん世界中ほとんどの人が、サッポロ一番が大好なはずである。もしそうじゃないんだったら、そうあるべきだと僕は強く願う。
さて、そんなサッポロ一番だが、スープの味ごとに麺も違っているらしい(メーカーのホームページにそう書いてあった)。
今まで気づかなかったが、言われてみると、あ!たしかに!と思う。何しろサッポロ一番が好き過ぎて、逆に味わって食べたことなんてない。
「キミの目の色がどんな色だったかなんて思い出せなかったが、ボクは世界で一番キミの目が美しいってことは知っている」みたいな歌がある(エルトンジョンの『your song』)。僕は「そんなことって現実にありえるのかな」と思っていたが、サッポロ一番に対してはあった。大好き過ぎて、ディテールを検討していなかったのだ。サッポロ一番から恋を学んでしまった。
それでは麺をじっくりと見てゆこう
さっそく、家に常備してあるサッポロ一番「味噌」「醤油」「塩」「豚骨」の袋を開けてみた。
サッポロ一番「塩」は清楚だ
乾麺の状態では、4種のサッポロ一番の中で一番縮れていない。乾麺の織りなす模様がきれいなのだ。そこからどことなく「整然」というイメージが湧いて出て、さらには「清楚」と褒めたたえたくなってきた。机の引き出しの中とか、筆箱の中身とかがきっちりとしているタイプのサッポロ一番である。
茹でたもののをそのまま食べてみると、ツルツル具合が他のものに比べて頭一つ抜けている。これは中華料理屋で食べるタンメンの麺のイメージに、かなり近い。
サッポロ一番「味噌」は荒々しい
サッポロ一番の「味噌」は、乾麺の状態で「塩」よりもだいぶ縮れが強い。
なんというか、味噌麺が描き出す模様は日本海の荒波のようでもある。塩よりも味噌の方が海っぽい、なんていう現象はたぶんサッポロ一番の中でしか起こらないんじゃないかと思う。
読者の方は「それがどうした」という風に感じると思う。ただここは、日本海に見えてくるくらい僕は乾麺を凝視していた、ということを認識しておいて欲しいなと思います。
味噌味の麺は、塩味の麺からツルツル感をなくしたような味がした。ちなみにどちらも麺は丸っこい。
メーカーのホームページを観てみると、味噌味の麺は楕円形で、塩味の麺は円形、と書いてある。そういわれるとそうとしか思えなくなってきたので、メーカーのホームページなど見るべきではなかったかもしれない。
サッポロ一番「醤油」は内弁慶
サッポロ一番醤油味の乾麺は、サッポロ一番の中で一番特徴的と言える。醤油が麺の中に練り込んであって、この状態でも醤油の匂いがプンプンするのだ。色も他の麺と違って、若干茶色がかかっている。
茹でた麺は、かなり平べったくて、ツイストが入っていた。塩や味噌を食べた後だと、平べったい部分がペランペランで、なんだか頼りないような気がする。
びっくりすることに、乾麺の状態であれだけしていた醤油の匂いは無くなっていた。食べている最中に醤油の味を探してみたのだが、なかなか見つからない。
さっきまでの個性的で主張的な香りはどこに行ってしまったのだろう。仲間内では騒がしいが、知らない人の前ではめっきりおとなしくなってしまうタイプの人のようだ。
なんかこういう部分が僕の性格に似ている、と思う。まさか自分がサッポロ一番醤油味にそっくりなんて、やってみて初めて気づくこともあるものだな、と一々感慨深い。
サッポロ一番「豚骨」
最後は豚骨。豚骨だけあって、麺がちゃんと細い。なんで今までこういうことに気づかなかったんだろうか。
口の中に入れるとこの細さが一発でわかるのだが、デジカメ写真では今いち伝わりにくい。目視で確認できないというのは不安だ。
食べた時に僕が確かに感じた「すごい!細い!」という驚き。
それは、サッポロ一番を食べているイキオイでそんなふうに思ってしまったんじゃないのか。そんな風にいぶかしまれても仕方がないよな、という気がする。
麺とスープを入れ替えるとこうなる
さて麺の検討をやってみると、どうしてもやってみたくなるのがスープと麺の入れ替え。
そして、その結果は、こちら。
サッポロ一番の麺とスープは不可分。そして驚くべきことに、露骨においしくない組み合わせも結構あった。そんな繊細な組合わせのバランスの元にサッポロ一番は成り立っていたのか!
新しい組み合わせの発見は出来なかったが、僕はこれで良いと思う。僕たちがいつも食べているサッポロ一番はすでに高度に完成された食べ物なのだ。
見て食べてみたら、かなり明確な違いがあったし、麺とスープの相性も非常によく考えられていたものだった。 ここまで来ると、今までその違いを気にかけていなかった僕がなんだか恥ずかしい。
サッポロ一番が本当に大好き、というなら麻雀の盲牌みたいに「目をつぶって触っただけでなんの麺か当てる」くらいのことはできた方が良いんじゃないのか、とも思う。
しかし、そんなことは誰も望んではいないのだ。今まで通り普通に食べれば良いか。