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フェティッシュの火曜日
 
ベトナムの着まわし一週間はスコール対応〜世界のフリーペーパーを読む


じわじわ感じる異国感

海外フリーペーパーというとどんなにエキゾチックなものかと想像してしまうが、思ったよりも日本の雑誌っぽい。言葉は日本語だし、誌面もなんだか馴染みのあるレイアウト。ちょっとパラパラめくったくらいでは海外のものと気づかないくらいだ。

そこに乗せられて、へー、ほぼ日本じゃん、と思いながら読んでいくと、急に違和感に襲われるときがある。異国情緒の不意打ちだ。


まずはファッション特集。街角おしゃれスナップとかあって、日本のタウン誌みたいな雰囲気

ファッション誌ではよく見る着回し一週間のベトナム版もあり


この着回し一週間、ファッションだけ見ると全然違和感がないんだけど、シチュエーションが妙にベトナムなのだ。木曜日のエピソードが「外回り中に突然のスコール」だったり、「今日は彼氏とドライブ」の写真がバイクだったり。

さらに水曜日で首に巻いているスカーフ、「カフェなどで冷房が効きすぎていることが多いので、1枚持っておくと重宝する」とかいてある。冷房文化の違いまで盛り込んだ着回し1週間なのだ。

続いて、こんな見慣れた紙面も。


新聞の野球欄。地の文が新聞のスポーツ欄そのままなのに、固有名詞だけが「ヤ軍」とか「ナ・リーグ」など。(ヤンキース、ナショナルリーグ)

健康相談。高血圧に注意、っていうすっごいふつうの記事なのに、ドクターの名前だけが「Dr.グエン・デゥ・トゥエット・ミン」


見た目、普通の記事なのに、固有名詞だけが違う。外国っていうより、パラレルワールドにでも迷い込んだ気分になる。


新聞には、短歌コーナーもあった。「小太りの老女腰ふりたおやかにサンバで行きぬ人気無き路地を」。もののあはれかと思いきや急に飛び出すサウダージ

盆踊り大会のレポート。「東京音頭と河内音頭。英語のちょうちんと"CAUTION"の文字が不思議となじんで見える」ってちょっと想像力が追いつかない


日本人向けだけあって、こういった現地の「和」な情報はよくフィーチャーされるのだが、おなじみのつもりで油断して読んでいると異国情緒の不意打ちを食らう。

こんなふうにチラリズム的に海外を見せられてしまうと、こちらが無防備だっただけによけいにグッと来てしまう。なんとも旅行に行きたくなってしまうのだ。

 

 

部下との関係に苦労するビジネスマン

これらのフリーペーパーは誰に向けられているかというと、おもに現地に住んでいる日本人向けであることが多い。(観光客向けのも中にはあるけど)

現地に住んでいる人といえば、仕事で来てる人が多数派なわけで、ビジネスマン向けの情報も充実していた。


といっても固いのではなくて、こちらはフィリピン人の部下を持つ人の、あるあるネタ。「へー、外国ってそういうことあるんだー」っていうエピソードが、海のむこうでは「あるある〜!」って言われてるという不思議。

左の写真のつづきで、フィリピン人による「日本人のここがイヤ」。「英語が下手」ってしょうがないだろ、って気がしないでもないけど、手厳しいなー。(フィリピンは公用語が英語)


一期一会の観光旅行と違って、ビジネスで駐在する人たちは、文化の違う現地の人たちとガッツリつきあわなければいけない。それにはいろいろ苦労があるようで、ハウツー記事もいろいろあった。

似たような話で、マナーの記事も。


NYのビジネスマナー。入室時のノックは3回すること(2回だとトイレの「入ってますか?」の合図)。脱いだコートは裏返して持つ、など。

お年寄りだけでなく、子供や女性にも電車で席を譲るのがタイ流。


ペラペラ読んでると、ある程度読み物の多いフリーペーパーはだいたい1冊に1〜2ページくらい、突然本気のビジネストピックが割り込んでくる。


会計関係の記事(ってざっくりした言い方をしてるのはなんのことだかよくわからないから)

タックスヘイブン対策(ってなに?税金天国?)の記事


さっきまでトムヤムクン特集とか載ってた数ページ後に急に週刊ダイヤモンドみたいな記事が出てきて驚く。

ただこれだけ載ってるってことは、こういう情報の需要があるということ。世界にはタックスヘイブン対策で悩んでいる日本人がいっぱいいるのだ。

地理的にも精神的にも、すごい距離感をかんじます。

 

奥様はメイドづきあいが大変

ビジネスマンがいるということは、その家族もいるということ。奥様向けの記事もあるのだ。


生活ハウツー。シルクカーペットのたたみ方。折りたたむときはオモテを外に、がポイント。折り跡がつかないらしいです

さっきの「部下とのつきあい方」の奥様版、メイドとのつきあい方。「あやさん」というのはタイの日本人の間でメイドさんを指す言葉だそう


ビジネスマン向けの記事がわりと想像の範疇にあったのに対して(タイだけに、…いやなんでもないです)、奥様向けの記事は思いもよらなかったところを突いてくる。

海外に行っても仕事は似たようなものだけど、生活は大きく変わるってことだろうか。


レシピ紹介のページなんだけど…

材料に現地のインスタントラーメン。日本の「アジアごはん」みたいなレシピ集とはひと味違う

同じくフード情報、こっちはタイ野菜の紹介。

「切ると白い液が出てシブシブすることがあ」るため、「油を手に塗る」と良い。現象もきいたことがなければ対処法もきいたことがない、雲をつかむような生活の知恵


僕は知り合いにそういう立場の人がいないので、海外で暮らす奥様の生活というのがイマイチよくわからないのだけど、こういう記事を読んでるとわからなさがますますエスカレートしていく。

メイドを雇ってカーペットは自分でたたみ、手に油を塗って野菜を切る。優雅なのかなんなんだか、ふしぎなくらしだ。

 

 

これもだいたいどの雑誌にもついてました

県人会が強い

サークルメンバー募集みたいなページが結構ある。

スポーツや趣味のサークルはもちろん多いのだけど、次に目につくのが、意外にも「県人会」。サイゴン埼玉県人会とか語感だけで魅力的だ。

もっと狭いところでは「○○中学同窓会」みたいなのまであった。遠い異国の地で、運動会の教師参加競技で数学の○○先生が転んだ話とか、理科室が雨漏りした話とか、テニス部の人気者だった○○ちゃんが最近結婚したとか、そういう話をするんだろうか。外国にいるというだけで、急にノスタルジーの方向性がわからなくなる。

あと「ベトナム語わからん会」というのがダメな感じで楽しそうでした。

 

 

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