聞こえないことには蛇さんも来れませんよ

そもそも都会の住宅街に蛇がいるんだろうか。いないことにはいくら蛇を呼ぶ効果があったとしても意味がない。ファミレスの呼び出しベルを家に持って帰って押しても誰も来ないだろう。

蛇よ来い！といいながら、電車を乗り継いで山まで来た。ここならいるだろうが、呼び寄せられたのはどっちなんだろうか。この企画はすでに笛を吹きながら蛇を探そう。になった。

山はさっきまで降っていた雨で地面が濡れ、じっとりとした重い空気が辺りを包む。あー、出そう。すっごい蛇出そう。

夜の山怖い

さぁ準備は万端だ。ついに蛇を呼ぶため笛を吹く。

リコーダーを取り出し、かえるのうたを吹く。すると急に蛙たちが鳴き始めた。「おぉ、凄い！流石かえるのうた！」ではなく、「何だよ、急に。怖いよ」と思った。

楽しげな曲だが、か細い笛の音が山に吸い込まれ不安になる。どうしよう、怖い。

こんな時には吹き戻しだ！と、リコーダーを持ち替え吹き戻しを吹いた。ぷひょーっと勢いよく伸びて、おぉ！と思うが巻き戻る時に自分の吹いた息がそのまま返ってきて、おぉ…と思った。

蛇より笛を吹きながら歩いてる人の方が怖いんじゃないか

笛を吹きながら蛇を探し、歩く。静かな静かな山の中で笛の音だけが響く。道の脇でガサガサッという音が！蛇か！みたいな展開があるだろうと思っていたが、一切無し。

たまーにジョギングしている人とすれ違うが、本当に怖い。カメラのファインダーを覗いている時に近づいていて、周りを見ると後ろにいたりする。ものすごく怖い。

と、思ったがその人達からすると、笛を吹きながら歩いている僕の方が怖いんじゃ無いだろうか。と思い、動画を撮ってみた。

あ、ジョギングしてた人。ごめん。

もう蛇出てくんな

しばらく歩くも、見つかったのはカタツムリくらい。数年ぶりにみたが、なんだか怖い。小学生の頃は何も気にせず掴んだり、飼ったりさえしていたのに、今は触るなんて凄くイヤだ。

年をとるごとに生き物が苦手になっている気がする。中学生の頃は学校によく蛇が出て、素手で捕まえたりしていた。今もその気分で蛇が出たら捕まえちゃえ。って思っていたが、これ、無理じゃないか。

うん、冷静に考えると触りたくない。どうしよう。というか学校に蛇が出るって何だ。そういえばあの学校、教室に沢ガニがよくいたな。それが普通だと思ってたわ、中学生時代。

思わぬ自分探しの様相を見せ始める、蛇探し。蛇というのは自分を表す鏡なのでは無いだろうか。いや、違うな。