水風呂で死んでいく
しばらくそのままでいると体の周りの冷水が体温に近づき、冷たく感じなくなる。が、実際はそのまま体温を奪い続ける。体表の感覚が麻痺し、血管がキューっと締まる。
すると自然と息を吸い込んで、ずっといきんでいるような状態で殆ど呼吸をしなくなる。そして今までは熱にあてられ、小さく、早く鼓動していた心臓も徐々にゆっくりと、強い鼓動に変わる。
ドクン…ドクン…
日常生活では意識しない心臓の働き、 強さを知る。そうやって頑張る心臓に反して鼓動が遅くなるとそれだけ運ばれる酸素も減る。冷水につかっている体とは違い水面から出ている頭、脳は今まで通りの働きをしようとするので酸素が足りなくなる。
ここで、意識が薄れる。
ドクン…ドクン…一回脈を打つごとに視界が白く薄れていく。そのたびにどんどん気持ちよくなっていく。まぶたは下がり、何故か目は上を向き、口も開いていく。
正直言って酷い顔になっているだろうが、この状態が気持ちよくてしょうがない。 脈打つごとに寝そうでうつらうつらしている3倍気持ち良いと思ってもらって良い。
生命としては死に向かっているだろう。ところが苦痛は全く無く、あるのは快楽。雪山で遭難し、寝たら死ぬぞ!という状況をテレビで見るがおそらくそれと似た状態。死に向かうのは分かるけれども、それに歯向かう事、生きるほうが困難で苦痛。 |