恐竜を見るといつも、あー、こいつらはしっぽあるんだよな、と思ってしまう。
私たちとはちがう。いや、体温から最終学歴まで何もかもちがうのだが、見た目からしても決定的にちがうのがしっぽだと思うのだ。
二足歩行、する。肉、食う。しっぽ…あー、それはない。すいませんでした、となる。
私たちにない、あのしっぽ。あのしっぽがある感覚、恐竜の感覚を一度味わってみたかった。
今日は恐竜のしっぽを作って恐竜になる。
(大北 栄人)
しっぽはズボン作りから
倒立二足歩行をするようになって、失われた人間の尻尾。今や尾てい骨や仙骨にその名残を残すのみである。
今、人類にしっぽが生えてたらどうなっているか?を考えた結果、そういうズボンが売ってるのではないか、という結論に至った。
ということで、ズボン作りから。
ジーパンが安い
何か安いズボンを、と思って探してみたら今はジーンズを買うのが一番手っ取り早いことに改めて驚く。
ドンキホーテで690円。恐竜のしっぽがいかにすばらしい出来栄えであろうと、この価格情報以上の有用性はないだろう。
ちまちまと縫いつけていく
多分あっても使えないが、ミシンもないので裁縫することに。690円でこのクオリティにまで持ってきた、ベトナムあたりの女工さんの苦労が台無しである。
ニ年前にシャツのボタンをつけて以来の裁縫。クオリティを問われない裁縫はそこそこ楽しかったのが発見だった。
今私の持ってるPコートはボタン6個中2個しかないが、これを機に4個くらいまで増やしてみようかと思っている。
ハンズがなくてもゴミ箱があるじゃないか
ズボンに詰める物として、重いものにしたかった。恐竜の太いしっぽは犬猫のものと違って見るからに重そうだ。ペットボトルをつなげて芯にし、古紙でスペースを埋めていく。
一見ゴミに見えるようなこの芯材だが、実際にゴミなのだ。ペットボトルは近所のゴミ箱から。
服が替わっているのも、作業が長時間となり、途中風呂に入ったりもしたからだ。
風呂上りにゴミ箱をあさりに行くのは思ったよりもインパクトのある体験だった。バンジージャンプに代わる都会の通過儀礼として採用したい。
しまった!!
ズボンに詰め物をすると、思わぬグロテスクさが。ああ、ちがう、こういうのを作りたかったんじゃない。
「これはやばい」と寝ようとしていた妻も騒ぎ出した。気軽にはじめた恐竜のしっぽ作りだが、ここまで相当な時間がかかっている。引き返せない。
ボツになるのか、この企画ボツになるのか?
家族で問題になる
こんな物が作りたかったんじゃない!と泣いている私を見て、寝入りばなの妻が起き出して手伝い始めた。問題は角度とボリュームじゃないかという。
なんとかなる、なんとかなる、という。私はただしっぽができあがっていくのをじっと見ていた。