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GWとくべつ企画 ノーパン6本勝負
 
ノーパンで親に会いに行く
背中を向けて仁王立ちしているのが父。

実は父とあまりうまくいっていない。最近ではお互い以前よりは冷静になったが、かつては会う度に、電話で話す度に口論になっていた。

そんな実家に、今日は数年ぶりに帰る。

ノーパンで。

安藤 昌教


父と私

私事で恐縮だが、父親とあまりうまくいっていない。父に反発し始めた高校くらいから、ほとんど腹を割って話をした記憶がない。


実家の前で。緊張感が伝わるだろうか。

まじめで普通がとりえ、生涯公務員だった父に反発して実家を出た。その後ミュージシャンになるだのカメラマンになるだのいいながら、僕も結局公務員みたいな仕事につくことになる。しかしその仕事も辞めて沖縄でお店を始めた。たぶんそういうもろもろ、僕の中途半端なところが父は気に入らないんだろう。

時代が違う、価値観が違う、だから仕方がないのだ。そんなふうに言い訳しながらなんとなくうやむやに過ごしてきた。しかし結婚してから妻にはことある毎に「仲良くしろ」と迫られている。

わかっているのだ、でもできない。

妻は僕が心を閉ざしているのが原因だという。そうかもしれない。でも今さらどうやって閉じた心を開いたらいいのか。

そこに舞い込んできたのがこの話だ。


そうか、パンツを脱げばよかったのか。

閉じた扉を開き、家族関係を再構築するため、ノーパンで父へ挨拶しにやってきた。なんかいろいろすっとばした感があるが、もういい、やけくそだ。せめて結果的に何かが好転したらもうけものだと思っている。


二度とまたぐな、と言われたことのある敷居をまたぐ。

慌てる母、目を合わさない父。


二日前からひどい胃痛と下痢に悩まされている。何でもストレスという言葉で片付けるのは嫌いなのだが、これはさすがにストレスだと思う。

手持ちぶさたをまぎらわすため、「へー、こんなのあったっけー」と独りごちなが僕が住んでいたころには無かったものの写真を撮ってきた。こんなの見せられても困ると思うが僕も困っているので少しは共有してもらいたい。


虎のついたて。

紙でできたひょうたん。


おみやげを持ってきた

母にはこの日、「ちょっと仕事で写真を撮りに愛知に行くので寄る」と連絡してある。間違ってはいない。

母は珍しく息子が帰ってくるというので、姉の家族を呼んでくれていた。僕も撮影兼交渉役、仲裁役として妻と孫にあたる子供たちをつれてきている。おかげでにぎやかで助かった。補足しておくが、母と僕とは良好とは言えないまでも一般的な関係を保っている。


賑やかで助かりました。

実家に帰るにあたり、手みやげを買っておいた。父は甘い物が好きなので、少し高めの最中を選択した。しかし買ってから思いだしたのだが糖尿病なんだ、うちの父。


栗入りならば間違いないだろうと思って。
でもこれたぶん父、食えないわ。

父の笑顔

子供達が部屋中はしり回り、場の空気が一通り和んだところで手みやげを渡す。すごい緊張していたので何を話したのか覚えていないが、妻が撮っていた写真を見ると父は笑顔だ。


おお、わざわざ悪いな。
最中か、そりゃ食えんわ(とは言っていませんが)。

「これ、おみやげです」

「おお、悪いな」

実に重みのあるやりとりだ。この後、場の空気は軟化の方向へ向かうもの思われたのだが、結果から言うと、これ以降会話らしき会話はなかったです。


父の隣の席には義兄(教師)が座った。

実家にはインターネット環境がない。父はテレビも見ないし携帯電話も触らない。「チャラチャラしたもの」が嫌いなのだ。僕が東京でどんな仕事をしているのかも知らないと思う。会社員だ、とは言ってある。

ここから先、父は主に僕の妻や義兄らと話をしていた。僕は正座で半笑いのまま、頭の上を飛び交う会話に相づちを打っていた。


忘れていたが僕は今日、ノーパンで来ている。

これ、なにか結果を出さないと記事にならないんじゃないだろうか。ハードなこの一日を無駄にはしたくはない。

しかし父は極端に写真を撮られるのを嫌う人なので(悪用されると思っているのだ、といつか母に聞かされたことがある)、カメラを向けると「なんで撮るんだ」とでも言わんばかりにあからさまに席を立つ。撮れない。


今年70歳になった父。
その姿を写真に収めようとカメラを仕込む息子。

というわけで部屋の隅にカメラを設置し、時間が来るとシャッターが降りるようにしておいた。つまりは隠し撮りだ。たまに子供たちが出て行き、シーンとなった時に小さくシャッターの音がすると息が止まりそうになる。


おもちゃの箱の上にカメラをセットして10秒ごとに撮影しました。
ノーパンなので背中が出ていますね。

こうして200枚くらい撮れていた隠し撮り写真を帰りの電車で見ながら、なにやってんだろうなおれ、と思った。


帰り際に母と玄関で(妻が父にも声をかけてくれたが、断られた)。

他のライターさんの書いた記事で、実家のご両親が出てくるものを読んだりすると、いいなあ、と正直に思う。

僕も今では人の親なので、あの時の父の気持ちがなんとなくだが理解できるようになった。親孝行するのも悪くないかもな、と今は思っている。意地張って嫌な思いするよりもそっちの方が気持ちいいに違いないのだ。

そう、ノーパンが気持ちいいのと同じように。


パンツを脱いでも越えられないものがある

ノーパンで実家に帰ったが、それによって父との関係が改善できたとは思えなかった。ズボンも履かずに行けば少しは事態は動いていたかもしれないが、これ以上妻に迷惑をかけたくはない。

心の壁はパンツより厚い、ということだろうか。たぶん違うが、これでまとめとさせてください。

帰りの電車にて。パンツ持ってこなかったので帰るまでずっとノーパンでした。

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