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ひらめきの月曜日
 
穴があるから入りたい

穴を求めて旅ロマン

いい穴探してやってきたのは、埼玉県鳩山町にある白山神社という小さなお社。ただ、穴そのものがこの神社にあるわけではない。その脇にひっそり佇むようにあるらしいのだ。


左の階段を下りていく
穴を演出するワイルド

場所がはっきりわからなかったので、通りかかった地元のおばちゃんに「この辺にある穴に行きたいんですけど…」と訊くと、「あの穴に?」との反応。言外に「わざわざあそこに…」という感じを受けた。

それでも道順を教えてくれた通りにたどっていくと、確かにそこに穴はあった。


表示に心沸き立つ
約束の穴が確かにあった

山の斜面に掘られた穴が3つ。これらは「十郎横穴墓群」と呼ばれている町の指定史跡。解説板には古墳時代後期のものとあるから、大体1500年くらい前からあるものだろうか。

そんな前から開いてる穴。穴そのものだけでも魅力的なのに、歴史という要素がそれを加速させる。


ザ・穴
コケの装飾が美しい

高さと幅と奥行きはそれぞれ1メートルくらいだろうか。それほど深くはなく、明るい日差しの差し込むオープンなスタイル。それでいてしっかりと穴然としてもいるのがすごい。

町役場に問い合わせたところ、別に入ってもよいとのことなので、静かに入ってみる。


穴は人を明るい気持ちにさせる

うん、いいね。ついつい普段滅多にすることのないダブルピースも自然と繰り出される。

ひっそりとして、人の行き来もないところ。地元の中高生はここに気になる相手を呼び出して、恋を告白したりするのだろうか。小さく畳んだ紙に、「穴で待ってるから」。恋が成就するのかどうかよくわからなくなってくる。

そんな穴ロマンに思いを馳せつつ、3つの穴のうち一番注目したのは最も奥にある穴だ。


ぽっかり度のボルテージが高い

他の穴がシンプルな横穴であるのに対して、地下に向かって斜めに掘られているこの穴。「穴度」という尺度があるならば、個人的にはこの穴の穴度が最も高いと思う。

こんな穴と出会えてうれしい。見れば見るほど、ここに身を置きたいという気持ちが高ぶってくる。


わき上がる謎の楽しさ
コロボックル的な一枚

それなりの広さがあって、窮屈な感じはしないこの穴。穴に入った状態で立つと、地面からこんにちはしているようでこれまた楽しい。

座って小さくなると、体全体が薄暗がりに包まれてなんだかしっとりと落ち着く。これだ、穴に入りたいと思うのは、こういう気持ちになれるからではないだろうか。

そしてそこから覗いた外の景色がまた素晴らしい。


ここに住みたい

穴の輪郭に切り取られた木立と日差し。穴に入ってはしゃぐ気持ちをいさめるような美しさ。穴で待っていた予想外の感動だ。

測量調査によると、現在開口しているのは3つの穴のみだが、周辺にはかなりたくさんの穴が存在すると予測されるらしい。まだ見ぬ穴がボコボコと。目には見えなくても心で穴を思うのもまた穴ロマンだ。

この地域にはこうした横穴墓が多々散在しているらしい。もう一つ、有名どころを訪れてみよう。


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