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フェティッシュの火曜日
 
経理職の裏話を聴いてきました

経理として10社渡り歩いたNさんの話


Sさん
・業種:非上場のソフトウェア開発業
・主な仕事:現金精算、伝票起票、決算補佐
・職歴:10社近い会社を転々と

Sさんは「経理実務のプロ」として今までに10社近くの会社を転職している。その中には在職中に倒産をしていしまった会社もあるそうだ。そんな経験豊富なNさんからはまさに「会社経営の裏側」ともよべる部分を聴くことができた。


会社が倒産!その時経理は…

---勤めていた会社が倒産してしまったときの話を聴きたいです
「倒産してしまったのは、3社目の小さな設計会社でしたね。社員7人くらいの。それまで大きな会社にいたので、小さな会社だと全部の業務を見ることが出来るかなー、と思ったんですが…」

「実際に入って資料をみたら、業績がアレレ?っていう感じで。私の他にもう一人いた経理のおじさんも、社員じゃなくて外部から来たコンサルタントの方でした。あやしい手形もいっぱいありましたし…」

たしかに最初のインタビューでYさんも「小さな会社の方がスキルが上がる」とは言っていたが。それにしても話の導入部からして、ヤバい臭いがプンプンする。そこも辞めようとは思わなかったのか。

「コンサルのおじさんから、『この会社は3月までしか持たない。僕と一緒に見届けてくれ。そしたらその後は悪いようにはしないから』っていわれて残っていました。でもその前に取引先が潰れて、手形で取引していたウチも連鎖して倒産に巻き込まれました」

よくよく話を聴いてみると、「融通手形」(粉飾決算の一種)を使った取引もあったとのこと。これに手を染めてしまう会社の倒産は、秒読みの状況と考えて間違いない。


 

「潰れたときは、私とおじさんは知っていたのですけれども、他の社員の人はビックリしていましたね。何も知りませんから。」

--倒産の兆候とかありましたか?
「社長室に人が何人も入っていって、そこから社長が何時間も出てこない。社長室から声も聞こえてきましたね」


いや、兆候というにはちょっとわかりやすすぎる

「金庫を開けろ!って詰め寄られたらしいんですけれどね。でもそのコンサルのおじさんが、ちゃんとした受取手形(現金にいつでも替えられる手形のこと)を個人名義の貸金庫に隠していたんで。その手形を割引いて(現金化して)倒産した後も社員に給料が支払えたんですよ」
まるっきり、「ナニワ金融道」だ。経理の人に語ってもらうとマンガの世界もぐっと近くなる。

---やばい会社の見分け方ってありますか?
「社長がいない、とかですね。金策に走り回っているか、社長自ら営業しているか。あと打合せが多くなったり」
「経理の人が浮かない顔をしている、ってのも良くないですよね。ちゃんと入るべきお金が入ってくれば経理はスッキリした表情になりますから」


「あ、でもよく考えたら私の今の会社がそうかもしれない…」と、話していて気づいてしまったSさん

 

横領するなら10億が最低ライン

ブラックな話ついでに聴いてみた。
---経理って会社のお金をごまかしたりできるんですか?
「経理がやろうと思えば、横領だってできちゃいますよね…ただ、少ない金額で横領しても仕方がありません。今後の一生を棒に振ることを考えたら、1億や2億じゃ足りない。10億は貰わないと、割が合わないですね」
横領という犯罪行為を、経済合理性で語っているのがちょっと恐い。

「でもね…そもそも10億円を横領できる大きな会社に勤めていないとダメですね。多額の取引がある会社じゃないと。自分自身にもある程度の権限がないと難しいかな」
「せいぜい会社の消しゴム持って帰るくらいで、ちょうどいいのかもしれませんね」

よかった。さっきの「横領できる」発言は冗談だ。この人、本気で横領とかする気じゃないんだ。多分こういう会話って全国の経理の人の鉄板ネタなんだろう。


多分こんな感じでみんな喋ってる

 

経理の醍醐味

こんなSさんだが、経理の仕事をやっていて嬉しい瞬間は、「きちんと会社にお金が入ってきた時」と言っていた。「会社にお金が入ってくることが、自分のところにお金が入ってくるみたいに感じられる」とのことだ。このあたり、何人もの人が勤めている会社のお金を、まさに自分自身が管理しているという気持のあらわれだろう。

Sさんは10回会社が変わったが、やっていることはずっと経理だ。自分からは強調しなかったが、たぶんこの裏も表も合わせて経理の仕事が大好きなんだろうな、そんな風に感じられました。

今回3人の方に経理の話を聴いたが、自然と流れが「ふだんは話せない裏話」ぽい感じになっていった。どんな会社にもいるけれど、なかなか本音は出せない、経理。正直、本当にヤバそうで記事に載せられなかった部分もいくつかある。 

とりあえず、今日から経理の人の顔色をチェックしてみましょう。会社の状況がなにか読み取れるかもしれません。

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