ワールドワイドに有名なあの人っぽく
タートルネックは暗喩的で、メッセージの伝達性としては厳しい部分があったかもしれない。今度は予備知識や説明があまりなくても明るくわかりやすいものを試してみよう。
先ほどの暗い告白から一転、子供にも大人気のマリオだ。今や世界中で通じるキャラクターだろう。
それにしてもこのマリオ帽子、手に入れるのに苦労した。いろいろ店を回ったのだがどうしてもあの形のものが見つからない。ハンチング帽だとやっぱり違う。
結局見つけたのは、意外にもダイソー。300円商品としてのラインナップにあるではないか。さすがに色は求めていた赤がなかったので、淡い色のものを買って着色した。これだけでもかなりのマリオ感が出たと思う。
と言っても、今回の格好はあくまで微妙なところ止まりで、現実にもいるかもしれないというのがルール。オーバーオールを着るところまではしないでおく。もしかしたら街で見かけるかもしれない、くらいの感じを大事にしたい。
それではピーチ姫を助けるべく繰り出そう。ポイーン。
亀がうろうろしているわけでもなく、平和に散歩。わざとベンチに座っている人たちの前を通り過ぎたりしてみたが、反応はない。ほら、この感じ、誰かに似てませんか?
心の中でそう呼びかけるもやはりダメ。結構メジャーなのを選んだつもりなのだが…。がっかりしていたのだが、撮影係に撮ってもらった写真を確認して気がついた。
歩いているときには気がつかなかったのだが、振り返って見ている女の子がいるではないか。やった!
表情こそ確認できないものの、「…マリオ?」と思ってくれたに違いない。そんな心の声が写真を通して聞こえた気がする。やはり子供はマリオが好き、そして反応が素直なのだろう。
おじさんは本物じゃないけど、わかってくれてうれしい。もうひと押ししてみようか。
マリオと言えば、赤い帽子の他にヒゲが欠かせないだろう。コスプレまでしてしまうと今回はルール違反だと思うが、ヒゲまでなら現実にもまだぎりぎりあり得るということにしたい。
そのヒゲも現実性を持たせるために、本物志向でいきたい。投入したのはリアルなヘアコンタクトでおなじみのプロピアだ。頭髪用だけではなく、つけヒゲ用として販売しているものを使うことにしよう。(ちょうどこの記事で使ったのが余ってました)
おお、ヒゲなし状態よりもぐっとマリオっぽさが上がったぞ。ヒゲも一目見て作り物だとわかるものではなく、かなり本物っぽく見える。こういういでたちのおじさん、いないとも限らないよね、というくらいのところまでは持ってこられたか。
さあ、パワーアップは完了だ。もう一度世に問おうではないか。
かなり自信満々で臨んだのだが、まずすれ違った中学生男子とおぼしき集団は軽くスルー。年齢的にもグループというノリからも「マリオ?マリオじゃね?」という反応を期待しただけに残念。もうマリオとかやってないんだろうか。
それとも単に怪しいおっさんとして見て見ぬふりをされたか。急に自信がなくなってきた。
今回のルールからしてあまり派手なことはしたくないのだが、このままで終わるわけにはいかない。そう思って軽くジャンプを繰り出してみる。
これは現実としてあり得るのだろうか。ここまでアグレッシブになってしまってよいものだろうか。そんな疑問を抱えながら、軽く跳ぶ。ポイーン、ポイーン。
そこへやってきたのは小さな子供。よしよし、こっちを気にしているぞ。
すれ違ったあと、こちらを振り返っている。もうこれは彼にとって私はマリオだったと言っていいだろう。その場での声こそ聞こえなかったが、あとで「お母さん、今日マリオがいたよ!」と話してくれていたら本当にうれしい。
やはりヒゲ効果はマリオとしての完成度を上げたようで、そのあとジャンプなしでも立ち止まる子供も出現。ものこそ言わねど「マリオだ!」と瞳が訴えかけてくるのを感じる。
よし、マリオ編は一応成功と言っていいだろう。子供の心はつかむことができた。次は年齢層を上げて狙ってみたい。