上り子が来るたびに誰かが喜びの声をあげる。声しか聞こえなくてもその言葉が本当に心の底からのものだと分かるくらいに感情のこもった声が何度も聞こえる。
丁度、目の前の女性が心待ちにしていた男性を見つける所を見ることが出来た。
不安げな表情で目を皿のようにして上り子が出てくる辺りを見つめる女性。両手は胸の辺りでこぶしはギュッと握られている。その視線が不意に一点に集中したかと思うと強張っていた表情がクシャっと崩れ、腕の力が抜けて、頭を下げた。
「あぁよかった、帰ってきた…」
そうつぶやいた後に上げた顔は驚くくらいにキラキラしていて、
満面の笑顔で男性までの距離、十数メートルを照らしていた。 |