僕は大手お弁当チェーンの「ほっともっと」で食べ放題に挑戦した。 お昼ごはんでお世話になっているホカ弁は、食べ放題だとどれくらい食べられるのだろうか。
(工藤 考浩)
オードブルをチョイス
30歳を過ぎるころ、いまから5年くらい前までは、比較的よく食べる方だった。 大食いというほどではないが、昼食に大盛りラーメンと餃子にライスおかわりくらいなら、なんのことはなく食べることができた。 けれど最近は、吉野家の牛丼並盛りで満腹になってしまう。 許容量が半分くらいになっているのじゃないだろうか。 そんな状況を考えると、お弁当だったら2個が限界だろう。 ご飯がお腹にたまってしまうのだ。 それでは「食べ放題」と謳うのははばかられる。 これを避けるために、お弁当メニューではなく、オードブルを選んだ。 オードブルならご飯がない分、お腹にも入るし、代金も高くなるのではないだろうか。
とはいうものの、ご飯を全く食べないで「お弁当」といっていいのか、という問題もあるので、オードブルとライスを1人前頼むことにした。 電話で予約の際「クリスマスのオードブルですか?」と聞かれた。 そうだ、今日はクリスマスイブだった。
こんなに重くていいのか
カウンターで予約したオードブルを受け取った。 「お箸は何膳?」という質問には3膳で、と答えた。 ついでにペットボトルのお茶も購入して、オードブルの包みを持ち上げたところ、ものすごい重さだった。 フルサイズのノートパソコンくらいはあるだろうか。 持ち上げた瞬間に「こりゃだめだ」と直感した。
食える気がしない
ずっしりと重い袋を抱えて向かったのは「ほっともっと」のすぐ近くにある公園だ。 オードブルを食べ終わったらすぐに追加のお弁当を買いに行けるようにと公園を選んだのだが、そんなことが果たしてできるだろうか。 こんな質量が僕の体内に入る気がしない。
オードブルの蓋を開けた。 から揚げ、ハンバーグ、ソーセージ、肉野菜炒め、煮物、いかげそ、グラタン、玉子焼き、枝豆…。 どれも僕の大好物だ。 通常ならうれしくて目移りしそうなのだが、こんどばかりはその喜びを感じない。 すでに見ているだけで、ぼんやりとした拒否反応が起こってくる。 明らかにもう負け戦だ。
おいしい
まずはエビフライから。 衣がサクサクしていておいしい。 続いてから揚げ。 これもジューシーでたまらない。 つぎはハンバーグ。 肉汁がジュわっとひろがる。 煮物はやわらかく煮えている。
一巡目は、おいしかった。 豪華な幕の内弁当を食べている気分だ。 温かいご飯にどのおかずもぴったりだ。
けれども、おいしかったのはここまでだった。 ポテトを食べた時点で、かなりの充実感を覚えたのだが、まだ食べ始めて数分だ。 この時点で、普通のお弁当くらいの量を消費しているだろうか。 多くの高等動物が感じるであろう、食料を口に運んだときの喜びが姿を消し始めていた。
もう充分
食べ始めて15分くらいだろうか、満腹になった。 仮に本物の食べ放題なら、ドリンクバーでコーヒーを入れているタイミングだ。 この時点で、オードブルは半分くらい残っている。 ただ、満腹とはいえまだ余裕はある。 食おうと思えばまだ食えるという状況だ。
箸がストップ
無理をすれば食べられるという状態は、ポテトひとつとから揚げひとつで終了し、箸が動かないというステージになった。 口の中の物をお茶で流し込むという、食べ物に対して失礼なことになってきた。 おいしく味わいたいのだが、脳がそれを許さない。
ここでやめれば、オードブルが2000円なのでその半分、ライスが130円とお茶140円で、1270円がほっともっとの食べ放題料金ということになるだろうか。 400円のお弁当3個プラスαで、妥当な金額のような気もするが、もう少し上乗せしたい。 限界を超えてもうひとくちふたくちと努力して、オードブルの残りは三分の一ほどになった。
限界の限界
本当にもうどうにもならないというところで、ギブアップをした。 この時点で計算するとオードブル2/3とご飯とお茶で1600円くらいが「ほっともっと」の食べ放題価格ということになる。 ただ、ここから先があるのがお弁当の醍醐味だ。 今すぐ食べなくても、あとで食べるということができる。
デスクと自宅で延長戦
公園で食べたあと、会社に戻って仕事をし、夜の8時くらいにオードーブルを食べた。 いつもならお腹がすいている時間帯だが、いまだ満腹のままだ。 枝豆をひとつふたつつまんだだけで、それ以上は食べられなかった。 その後自宅に帰り、続きに挑戦した。 先ほどよりは余裕があったので、残りはおいしく食べることができた。 完食にこぎ着けたのは、夜11時を過ぎたころだった。
8時間の大勝負
公園で食べ始めたのが午後3時、食べ終わったのが夜11時なので、8時間を要したことになる。 食べ放題は時間制限がある場合が多いので、ズルではないかという気もしなくもないが、それよりも全部食べたことの方が重んじられべきだろう。 というわけで、「ほっともっと」の食べ放題は2,270円であった。