石を熱する
というわけで、ようやくイモを焼く作業に入れる。とは言っても、難しいことは何もない。土鍋に石を敷き詰めて、アルミホイルで巻いたイモをのせる。それから中火、頃合いを見計らって弱火で焼き続けるだけだ。
また、万が一の大爆発のことを考えて、フルフェイスのヘルメットを装着する。メット装着で台所に立つとものすごく暑い。我慢するしかない状況だが、ここがまさしく我慢のしどころである。背に腹はかえられない。
石が爆発した!
…と、加熱時間も20分を過ぎた頃であろうか。土鍋の中から何かが弾ける音が聴こえてきた。
いや、イラストは嘘だ。しかし、石は確かに爆発していたようである。土鍋の底に、粉々になった石を発見した。
その後も何回か、小さな破裂音が土鍋から聴こえてきた。あんなに頑張って選んだのに、けっこう爆発している。
思えば、人間でも「この人優しそう!」とか思った人に限って、キツいことを言ったり、すぐに怒ったりするものである。人間関係も石の選び方も、本質は似ているのだ。「石は爆発するもの」「人間はすぐ怒るもの」と覚えておくのが、危険回避のための賢い生き方だと思う。
ただし、この石の爆発、全て土鍋の蓋で防げる程度のものであった。取り扱いに気をつければフルフェイスのヘルメットまで用意する必要はなかったのかもしれない。そういえば僕も日頃から過剰に「怒りそうな人」に対して、過剰に構えて接してしまうことがあるな。…そんな余計なことを考えながらイモを取り出してひっくり返したりしていたら、ちょっと指先を火傷してしまった。痛い。
焼きイモ焼けた
40分くらいは焼いただろうか。実はさっきから「石の焼ける匂い」と「イモの焼ける匂い」が混ざり合ってキッチンに立ちこめている。そうだ。これはあの、「焼きイモ屋さん」の匂いそのものだ。どうなんでしょう。そろそろイケるんじゃないでしょうかね。いいですか。
試しにお箸をイモに刺し込んでみると…やった!もうすっかりいいそうですよ!
一口食べてみる…一瞬で、胸がうれしさでいっぱいになった。
焼きイモ屋さんの焼きイモと、寸分も違わない!しかも石焼きイモ屋さんの中でも特にアタリの方の焼きイモを再現できている。甘い!ホクホク! 大好き!
今季の焼きイモスタートは、最良の形で迎えることが出来た。今年の冬はきっと何か楽しいことが起きるだろう。そんな予感まで湧いて出た、おいしい焼きイモでした。
成功したので、作り方をまとめておこう。くれぐれも石の爆発と火傷には気をつけて下さいね。