飲むのがむずかしいコーヒー
続いて、マスターが出してくれたのは、「雫」という北山珈琲店のオリジナルコーヒー。濃いめに抽出されたアイスコーヒーの上に生クリームが混ざらないようにのっている。
この「雫」、口の中でコーヒーと生クリームが混ざり合う感覚が信じられないほどうまい。今でも、ひょっとしたら夢だったんじゃないかと思うくらいだ。
ただし、これ、上の唇で下層のコーヒーを吸い出すようにして飲む必要があるので、少し飲むのがむずかしい。視界の端で、工藤さんが飲むのに失敗しているのが引っかかる。これはこれで工藤さんにとっては悪夢だろう。
---どうしてこんなにコーヒーにこだわった店にしているんですか?
「だから、この店ではお客さんよりも、コーヒーが一番偉いということにしたいんです。」 お店でコーヒーを飲む意外のことを禁じているのも、コーヒーを最優先にしたいからだという。 「こんなジジイが自分で作ったルールを守り通しているのも、滑稽かもしれませんけれどね」
正直に言おう、当初僕は「へんくつなガンコマスター」を想定して取材を申し込んだのだ。でも話を聴かせてもらったら、全然そんな人ではなかった。
コーヒーのうまさもさることながら、僕よりも何歳も年上のマスターが、コーヒーに対して真摯な気持を持ち続けているということに、素直に感動してしまう。コーヒーを飲むことを通じて、そのままマスターのピュアな気持をいただいているみたいだった…おっと、今夜の僕は少しカフェインが効きすぎているのかもしれない。
この後、今日焙煎した豆をおみやげにいただいた。「2週間くらい経ったら飲んでみて下さい。熟成がわかるとおもいますよ」とのことだ。
貰った時は単純に「やったー!自宅でもあの味が!」と思ったのだが、やってみると全然うまくいかない。そりゃそうだ。僕は今までコーヒーを豆から入れたことがないのだ。正直熟成もなにもよくわからなかった。もったいない。お手本の味を焼き付けるために、あと何度か行かないとなー、などと思ったのだった。
本当に「珈琲が主役の店」でした
取材協力 北山珈琲店 東京都台東区下谷1-5-1