星も見飽きた
懐中電灯と星明かりを頼りにやってきた場所は、かなり水深が深いようで、その底はまったく見えない。
ここでダメならまた来年だねという話をしながら、糸にスルメを結んだだけという、一周回ってオールドスクールなザリガニ釣りの仕掛けを湖底に沈める。
スルメを沈めて30分。やはり反応はない。
一緒に頑張ってくれていた友人も、「玉置さんはさ、ザリガニよりも大切なものを見つけたんじゃないかな?」と、適当なことを言いながら微笑みかけてくるようになった。たぶんそろそろ本気で帰りたくなってきたのだろう。
また夜空を見上げてみても、流れ星はそう都合よく流れない。
最後の最後に訪れたカタルシス
もうやるべきことはすべてやった。悔いはない。これ以上やったらみんな風邪を引いてしまいそうなので、今日はこの辺で勘弁してやろうということで、諦めて仕掛けを引き上げる。
すると餌のスルメの何十倍もの重さがするではないか。だが糸を上げている途中でフッと軽くなった。どんな釣りをやっていても、一番がっかりする瞬間である。
友よ、すまん、30分延長。
友人を引きとめ鼓舞する意味もあり、「今いた!絶対いた!」と必要以上に興奮をしてみせる。いや、本心から興奮しているのだ。
もう一度三人でスルメを落とすと、ここからの勝負はすぐだった。30秒もすると、私の糸が流れとは別方向に動きだした。
「網!網!網!」と小声で友人に呼びかけ、今度こそはとゆっくりと重みのある糸を引き上げる。
ライトに照らされた水面近くで、スルメにくっついたなにかを友人が網ですくった。
ドラマのような展開の末、本当に釣れた。アメリカザリガニとは色も姿も大きさも違うザリガニ。これがウチダザリガニなのだろう。なるほどこれは外来種だ。
昨日、今日の無駄な苦労が思い出される。本当に釣れてよかった。
6匹釣れました
さて釣って大喜びしておいて申し訳ないところだが、こんなのが国内で増えたらダメだよなあと、アメリカからやってきたウチダザリガニを手に思った。
どれほど生態系に悪影響を及ぼすのかはわからないけれど、日本国内でスルメで釣れてしまうことに違和感を感じさせる生き物だと思う。まあ自分で泳いできた訳ではないので、ザリガニに罪はないのですが。写真で見るよりも実物は全然インパクトがある。
どうやらスルメの匂いでウチダザリガニが集まってきたらしく、続けざまに三人で合計6匹を釣りあげた。もっと続ければいくらでも釣れそうだったけれど、いい加減に体が冷え切っている。味をみるくらいなら、この量があれば十分だ。
無事釣れたことだし、さあ、食おう。