観光が苦手だ。
何が苦手というと、まず目的地までの電車の乗り継ぎ。 「遅れちゃいけない。間違っちゃいけない」と思いすぎるあまり、 移動中の車内でもずっとそのことばかり心配してしまい車窓を楽しめない。
そして目的地に着いてもそこからまた観光地を巡るのにバスに乗ったりせねばならず、 それもまた不安で観光を楽しめない。移動に対する強迫観念が旅をストレスフルなものにしている。
だから逆に「乗り継ぎ出来なかったらあきらめて別の所に行く」という旅ならどうか。 移動も観光も間に合わなそうだったらあきらめて、最終的にあきらめの天竺へ向かう旅。
(小柳健次郎)
あきらめてもいいけど行きたい目的地
まず旅の目的地を決めよう。あきらめてもいいとはいえ、 ある程度本気で行きたいと思ってるところじゃないと旅気分が出ない。
それで「行きたいところ」を考えたとき真っ先に浮かんだのが富士山だ。
関東の人にはお馴染みすぎるのかもしれないが、 ついこないだ津軽海峡を越えて上京してきた人間にとっては 「名前はよく聞くけど見たことない」ぐらいの存在である。だから一度見てみたい。
調べた結果、富士山を見る場所は河口湖がベストそうだったので、 そこに行くことにした。河口湖があるのは山梨県。
そして山梨県といえば武田信玄である。 日本史の歴史が浅い北海道から来たものにとって こういう「THE・NIPPONN」というのにめっぽう弱い。 信玄も見たい。
以上のことを考慮してルートを検索した結果、旅の行程を次のように組んだ。
わせて8回ほど電車に乗らなければいけない行程。 特急に乗ればもっと速くて乗り換えも少ない数で行けるけど、 今回はべつにあきらめてもいい。だから乗り換えは多くても一番安い行程に気兼ねなく出来た。
あと山梨がワインの産地でもあると知ったので、ワインの試飲も予定に入れた。 もしそこから後の予定が途中でぷっつりなくなってたら、それはあきらめたのではなく 酔いつぶれただけです。
出だしからあきらめそうになる
組んだ旅の予定では、最初の電車の出発時刻は朝の6:45分。 そしてこの予定は旅の前日に慌てて作ったもので、完成した時点では夜中の2時を回っている。
朝早い旅の前日はいつもそうだ。なんだかんだやってるうちに時間が過ぎて、 気づけば日付が変わっている。そして早く寝なくちゃの重圧でろくに寝れないまま出発時間になってしまう。
だが今回はあきらめてもいい旅。別に起きれなくたってあきらめていいんだ。
ああホッとする。自分で書いたことなのに、びっくりするぐらいホッとする。
さっきまで絶対守らなきゃいけないと思ってたことが いきなりあきらめても良いことになって一気に血圧が下がり、すぐ眠れた。
そうはいってもさすがに出だしからあきらめるのもどうかと思ったので なんとか起床。それでもいつもなら緊張して何度も目が覚めるのに、気楽さからかぐっすり眠れた。
というのはウソでやっぱり3回ほど起きてしまった。どうやら時間通りに起きないといけないという強迫観念は染みついてしまっているようだ。
ようやく旅にでます
行程と朝起きたくだりだけで半ページ使ったところでようやくあきらめの旅に出ます。
分倍河原であきらめそうになる
最寄り駅の小田急読売ランド前駅で電車に乗り、登戸でJRに乗り換える。 ここまでは普段の生活でもよくやってるので不安もあきらめる要素もまったくない。
だが次の分倍河原駅は初めて訪れる駅。ここでJRから京王線に乗り換えないといけない。
この「初めての駅で違う路線に乗り換える」というのが超苦手である。 東京に引っ越すまで鉄道会社はJRしか存在しないと思っていた人間にとってそのシステムが難解極まりないのだ。
そしてここでもやっぱり乗り換え用改札機に引っかかってしまった。
いままでになんど罠にはまったか。 こういうのはJRと私鉄を乗り継ぐときによく見かけるのだが、 SuicaとPASMOのどっちをかざせばいいのか未だに分からない。
今回も登戸でSuica(Kitacaだけど)を使ったんだからここでも当然Suicaだろう、 とかざしたら写真の通りトラップ発動である。
駅員に聞こうかと思ったが、知らない人に声をかけるのは乗り換え以上に苦手だ。 だから聞くのはあきらめて(プチあきらめ)、一旦駅を降り、再度PASMOで改札を通った。
困難に挑戦せず安定を選ぶ。絶対に表に立てない自分らしい生き方。
そんなことがありながらもここまではあきらめずに来てて、 企画のためにそろそろあきらめた方がいいんじゃないかと逆に不安になってきてます。