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はっけんの水曜日
 
丸い石が集まる町がある
これが神様!

丸い石が集まる場所があるのだという。しかもそこでは石を神様として大切にしているのだとか。

石といえば当サイトでもかなり大切にしていると思うのだが、拾ってきて売ったりとかその辺に置いて誰かに持って行ってもらったりとか、さすがに神様とまではいえない扱いだったように思う。

石が神様になるとはどういうことなのか、見に行ってきた。

安藤 昌教



それは山梨県にあります

その地域は山梨県塩山駅周辺にあるのだという。

都内から列車を乗り継ぎ1時間、目的の場所塩山駅に降りると少しだけ空気がきれいに思えた。山が近いせいだろうか。


塩山駅は夏休みみたいな景色でした。

一つ手前が「ぶどう郷」という魅力的な駅。
駅前は温泉地なんですが、一歩入るとごく一般的な住宅地です。

この町のどこかに石の神様がいるのだという。しかし情報はそれだけ、その石が大きいのか小さいのかすらわからないのだ。これでは藁山の中から針を探し出すような話ではないのか。

そんな途方にくれた僕にカツをいれるかのような明るい声が耳に飛び込んできた。

「あれです!あれが丸石神です!」


あれです!

「あ!本当だ!」

その人の指さす先には丸い石が積み上げられたほこらのようなものがあった。これが神さまの石、丸石神なのだ。で、あなたは?

***

まわりくどい紹介の仕方で申し訳ありません。

指を指している女性、この方こそ今回、石探しのナビゲーターをしてくれる吉城さんだ。彼女は個人的にこの丸石神のサイトを運営していて、この地方の石信仰に関してかなり詳しい方なのだ。

今日はよろしくお願いします。


丸石神の専門家、吉城さん。

「よろしくおねがいします。早速ですが近くにいくつか見応えのある場所がありますので、行ってみましょうか。」

石の神様の専門サイトを作っている人、と聞いてもっと職人みたいな人が現れるものだと思っていたので、彼女がやってきた時には(いい意味で)意外だった。

その手に持っているのは何ですか?

「これまでの調査をまとめた資料みたいなものですね。」

この資料がまたすごいのだ。ちなみに丸石神についての詳細は彼女の運営するサイト「丸石神」に詳しいのでご参照ください。


シンプルな仕上げの文庫本サイズの研究書です。
最初の見開きがまずもって石!

この資料は彼女がこれまで独自に調査してきた丸石神についての研究書だ。何年にも渡って石を見て歩いた記録がここに記されている。

いつも1人で見て回ってるんですか。

「ええ。基本的に共感してくれる人も今までいなかったので。」

きっかけは?

「最初は大学の課題研究がきかっけだったんですよ。円をテーマにした研究で、丸い石があるっていうんで参考になるかと思って見に来たらはまってしまって。この本は卒業してからの研究の成果も入っていますが。」

大学を卒業して会社に入り、忙しい日々を送る傍らで、彼女はこの地にしばしば訪れて石を探して歩いているのだという。


一つ一つ丁寧に写真が掲載されている。
古い資料と照らし合わせてマッピングされた地図。

700箇所以上あります

「古い資料によると丸石神はこの周辺だけでも700箇所以上あるらしいんです。」

現在彼女の石探しの道しるべとなっている資料は、民俗学者の中沢厚氏が20年以上も前に書いた本のみだ。当時からすると地図もすっかり変わってしまっているわけだが、その間を補間しながらこれまで彼女が足で探した丸石神は40以上。まだ当分楽しめそうな趣味だともいえる。

今回は彼女が見つけた丸石神の中のいくつかを案内してもらうことになっている。

ちなみにさっき彼女が嬉々として指し示してくれた石がこれだ。


丸石神。

実になんというか、ごろごろしてる。

これら丸い石が「丸石神(まるいしがみ)」と呼ばれる神様なのだという。一見無造作に積み上げられているだけのようにも見えるのだが、前面の石にはちゃんと「道祖神」と彫られている。


道祖神と彫られています。
横には石碑とほこらも同居。

この「そのへんにあってもおかしくない石」を神様と同列に奉っている感じがまた魅力なのだとか。

これから続々と丸石神が出てくるわけですが、どこかできっとその魅力が「わかる」瞬間が来るので辛抱強く読み進めてもらえるとうれしいです。僕は5箇所目くらいで「わかり」ました。


石。


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