愛のキューピッドになってみたい。
愛のキューピッドと言えば、ハートの弓を射って 男女をラブラブにする天使である。 自分はどう考えてもその対局の存在だが、なってみたいと思う気持ちはなぜかあるのだ。 たぶん肉ばかり食べてると無性に青物が食べたくなるのと似てる。
だけど人間を対象にしたキューピッドになるのは御免だ。そういうのは商売として既にあるし、 僕がやった場合ハートでない弓で射る可能性が高い。
だから花にとっての愛のキューピッドになろう。
(小柳 健次郎)
愛の粉(花粉)を採取
花の愛のキューピッドとはどういうことなのか。 花は(様々な種類はあるが)主に花粉を別の花に受粉させることで子孫を増やしていく。
つまり花粉を採取してどこか別の花に受粉させてあげればそれは愛のキューピッドと言えるのではないだろうか。 しかも人間で言えばいきなり妊娠させるぐらいの凄技だ。
でも虫と同じだ。と一瞬思ったが蜜を吸いに来る虫とは慈善の心がまったく違う。キューピッドだから。
この時期に咲いてて割とどこにでもたくさん咲いてる花(探すのに苦労したくないから)を調べたところ、 ビヨウヤナギという花が該当。黄色くてキレイな花だ。
さっそく花粉採取と行きたいところでも、愛のキューピッドの責務としてどの花を対象にするかは選ぶ必要がある。 うっかり花界のモテモテやろうとか選んだら愛のキューピッドとして一生の恥だ。
でもそんなのはどうやって見分ければいいのか。
群生しているビヨウヤナギの向かい側の日陰に一輪だけ咲いてるビヨウヤナギがあった。 その寂しいたたずまいに問答無用でこれに決定。お前のためなら頑張るぞ、という気持ちになれる。
雄しべの花粉を綿棒で採取。なかなか花粉が付かず雄しべの上でなんども転がしたら、 綿棒が黄色くなりすごく耳垢みたいになってゲンナリした。
それでもこのさびしい花の期待を一身に背負っているのだ。 耳垢みたいなのが付いた綿棒を持ちあるくという、キューピッド像からだいぶ離れたイメージにもゲンナリしていられない。
悪魔のトラップ「キンシバイ」
ビヨウヤナギの花粉を採取したところで少し離れたところに同じような花があった。 これまた6月に咲いてるキンシバイだ。
看板があったので間違わなかったけど、これが普通の道ばたにあると危うい。絶対間違う。
新宿から東京湾をまたいで袖ヶ浦へ
花粉を持って行く先は出来るだけ遠くがいい。 自然に風や虫で運ばれない距離を行ってこその愛のキューピッドである。
しかしスケジュール的に大幅な移動は出来ないので、「海をまたいだらすごく遠くな気がする」という感覚によって、 新宿から東京湾を挟んだ向かい側の袖ヶ浦市を目指すことにした。