「カツオブシが生きてる!」なんてことを言ったりしますな。カツオブシムシ、じゃなくてカツオブシのことである。削り節を熱々のお好み焼きに乗せると、立ち上る熱気で、薄い削り節がまるで生きているかのように踊りだすアレだ。
その削り節を人間の形にしたら、もっと「生きてる!」という実感が沸かないだろうか。カツオブシに命を吹き込むプロジェクト、と決めてみたいが、「あははは生きてる生きてる!」と笑いたいだけで始めた企画である。
(乙幡 啓子)
元は魚の筋肉ってこと忘れてませんか
カツオブシ・アライブ計画を思いつくや、近所のスーパーにさっそく買いに出かける。いや、家に削り節はあるのだけど、親が結婚式の引き出物で貰ってきた小分けパックのしかないので、もっと一ひら一ひらがでかく丈夫な品を探しに出たのだ。
いくら丈夫でも、踊ってくれないと意味がない。出汁専用の荒々しい分厚い削り節は、本日は却下である。
帰宅後、今度はお道具作りだ。何の道具かというと、「金型」を作るのである。
たくさんのダンサーを集めて群舞させたい。そのためにはたくさんのダンサーを育てなければならず、となると個人レッスンでは時間がかかる。今回は団体レッスンのみ受け付ける、つまりクッキー型のような金型でポンポンと型押しして、ダンサーを量産させるのだ。果たしてうまくいくのか。
なんたって素材はカツオブシなので、複雑なポージングはたぶん不可能だ。よって結局は単純なポーズに落ち着いた。要は形より動きだ!ボディリズムだ!
少々いびつだが、まあいい。要は形より動きだ!ボディリズムだ!
これでもって、大きめの削り節にぎゅぎゅーと押し付けていけば、容易に大勢のダンサーを生み出せるのではないか。ミュージカルでロングランも夢ではない!
ミュージカルも、ロングランも一瞬の夢と散った。この生徒たちには、団体レッスンは向いていない。
なにより薄すぎるということもあるし、カツオの筋肉繊維が邪魔をする。厚いタタキの時には気にならなかった筋肉構造が、薄くなった今こんなにクローズアップされてくるとは。
しかたがない、カリキュラムの変更だ。個人レッスンを行うしかない。つまり「明日のスターをひとりひとり、ハサミで丁寧に指導いたします」。