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ロマンの木曜日
 
妖怪の専門家に話を聞いてみた

妖怪と、妖怪じゃないもの、微妙に妖怪っぽいもの


オフはラフな格好の妖怪研究家

大島さんには、まず、「妖怪と妖怪じゃないもの」についてコメントをいただいてみた。「妖怪」を知るためにはこのくらいの所から聞いてみるのが良いだろう、という私の考えだ。しかし…これが思いの外ディープな議論に繋がってゆく。


鬼太郎…○


斎藤「たとえば、鬼太郎は妖怪というよりは、水木しげるのマンガのキャラですよね?」
大島「いや、妖怪として考えていいと思います。鬼太郎は伝承を持っていないけれども、下駄やちゃんちゃんことかのレトロな要素があるし、妖怪としてプレゼンテーションされている。そして、「墓場鬼太郎」は水木しげる氏の全くの創作ではないんです。

初っ端から意外だ。鬼太郎は単なるマンガではないのか?

 

ピノキオ…×

それでは、ピノキオはどうだろう。鼻が伸びるところは天狗みたいだし。
大島「そもそも日本のものではないものは、妖怪とは呼べないですね」
日本じゃないと駄目なのか。たしかに外国には「妖怪」なんていないような気がする。

 

まっくろくろすけ…△


日本的なところでいくと、まっくろくろすけなんてどうだろうか。
大島「宮崎駿の創作ではあるけれど、これは妖怪としてなかなかいいセン行っている。トトロだけじゃなくて千と千尋の神隠しに出てきた時も違和感が無かったですよね。」
「古い日本の郷愁」みたいなものがベースにあるところが良いそうである。
ちなみに、トトロは西洋のトロルを元にした妖精で、妖怪とは呼べないそうだ。

 

ツチノコ…○

斎藤「逆に『みんなが妖怪じゃないって思っているけれど実は妖怪』てのはありますか?」
大島「ツチノコですね。昨今UMA的な扱いをされているけれども、実はツチノコの伝承は江戸時代以前からあるんですよ。日本書紀にも載っているくらい」
ツチノコは妖怪だったのか!70年代のツチノコブーム、あれはみんなアミを持って妖怪を捜していたのか(私は直接は知らないが、ちびまるこちゃんでそういう話があった気がする)!中々シュールな光景だ。

 

むささび…△

むささびも「妖怪に近い」という。
大島「昔はコウモリが年を取ると、むささびに、更に年を取ると山地乳(ヤマチチ)という妖怪になると考えられていたんですよ。ポケモン的なんだけれど。」


がんばってメモっている私、そして剥製の眼差し

話はなかなかむずかしく、ついてゆくのがやっとだ。

また、このキャラごとの各論の他に妖怪総論も繰り広げられた。たしかこんな感じだったと思う。

  • だいたいの妖怪は各地の伝承とか怪異とかが複雑にからみあって伝えられている
  • でも伝承を持っていないのもある(傘お化けとかがそうらしい)
  • 江戸時代では化物はすでにキャラクターとして絵巻物に描かれていた
  • 民俗学の研究している「妖怪」は、私たちの想起する妖怪から離れている
  • 水木しげるは昔からの伝承と自身のイラストをまとめて妖怪として表現している
  • こども向けの妖怪事典に載っているか載っていないかは重要だ
  • 現代ではスピリチュアルブームにより、人々は妖怪よりも幽霊の方にリアリティを感じやすい

うーん、アカデミックだ。もっと詳しく知りたい人は大島さんの『現代幽霊論』を読んで下さい。
(これ以上私に質問されても答えられません)
この各論と総論を踏まえたうえで、妖怪っぽいものが妖怪になるには、以下のポイントが重要なようだ。

  • 日本のレトロな要素がある
    (伝承だったり、服装だったり)
  • 大島さん的な定義としては「水木しげる」が妖怪として提示しているものが妖怪
    (もちろん、これは民俗学の扱う「妖怪」と同じではない)

あれ?まとめたら、最終的にたった2項目になってしまった。おかしいな、結構いろんな話を聞いたはずなのに。
まだまだ妖怪トークは続きます。


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