メニョスは走った
韋駄天の如く
また途中下車
再び走り出した僕だったが、ここは学校の最寄駅ではない。またもや途中の新宿で下車してしまったのだ。
電車の中で華やかなビル群を見ているうちに、「あ、そういえば本屋に行って、確認したい本があったんだよね」と思いついたからだ。
メニョスよ、何か忘れてないか
新刊の文芸書などをつらつら見つつ、やっぱり欲しい本はなかったので店から駆けだす。なぜなら確認したい本なんて元からなかったからだ。こうしているうちにも時間は刻一刻と過ぎ去っていくのだ。
走れ、メニョス!
忘れてた!
疲労と希望の果てに
原宿駅まで来た。JRだと学校へは渋谷駅が最寄だが、尿を提出するその日は素晴らしく天気が良かったので、お隣の原宿から走って行こうと思ったのだ。
異常なしであります
散歩がてら、代々木公園なぞ行ってみる。今日は本当にいい天気だな。久々に走り回って、オラ疲れたゾ…。
zzzzz
もう尿など、健康診断書などどうでもいいのではないだろうか。自分は検尿すら提出できない男になってしまってもいいのではないだろうか。
どうでもいいし
自らを走れメロスに見立てた独りよがりも、ここでおしまいにしてしまおう…。もうそっとしてくれ。今は何もかもがくだらない。
もうすぐ日が暮れてしまう
しまった。少しばかりの間寝てしまったようだ。どうかしていた、ここまで来て提出しないなんてありえることではない。我が信義にかけてこの尿を学校へ提出せねばならない。
すでに陽は落ちかけている。だが、僕は走れる。誰かが待っているわけでもないが、走ることができる。
日没までにはまだ少し時間がある。それが希望だ。勇者よ走れ。
急げ!
死力を尽くして表参道を駆け抜けろ
持ち帰らないといけないし
メニョスは一心不乱に駆け続けた。もはや何も考えていない。なんだかわからないけど走った。
そうして学校に到着したのである。日はまだ沈みきってはいない。メニョスは間に合った。自らに課した義務を成し遂げたのである。
関東国際大学のイメージです
こうして自分との戦いは幕を閉じた。
検尿を提出し終わったあと、また撮影に使うことがあるかもしれないと思い、予備の検尿容器を頂こうと係の人に頼んだ。
係の人から「それはいいんですけど、ご丁寧に何回も出す人がいるので気を付けてください」と言われた。なんだかすごく検尿を出したくて仕方がない人に思われた。
メニョスは、ひどく赤面した。
でも間に合ってよかった