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ひらめきの月曜日
 
銀を温泉でいぶし銀にする


硫黄くさいスプーン

 私ごとで恐縮だが、先日「銀のスプーン」を購入した。文字通り銀製のスプーンだ。銀製の食器を持ってるなんて貴族みたいな気分だ。何気ない僕の日常に貴族がやってきた。

でも実はそのスプーン、まだ一度も桐の箱から出していない。ぴかぴか過ぎて引いてしまうのだ。あまりにもきれいなシルバーなのでもったいなくて使えない。貧乏性ってやつですね。

僕としては、まっさらよりも、ある程度使い込まれた「いぶし銀」くらいの状態の方がちょうどいい。その方が対等に付き合える。

というわけで、今回はぴかぴかの銀を「いぶし銀」にしたいと思います。ゆっくり温泉などに浸かりつつ。

榎並 紀行



「いぶし銀」への道 その1 [いぶし液による、いぶし]

銀製品は使いこんでいくうちに自然と味が出てくるもので「いぶし銀」と呼ばれる風合いになるまでには時間がかかる。でも僕は早く貴族になりたいので、そんな悠長なことはいってられません。

そこで取り寄せたのがこれ。


銀粘土などに黒ずんだ風合いをつける「銀いぶし液」

シルバーアクセサリーなどを趣味で作っている人にとっては常識だと思うが、作品の仕上げに、黒くいぶしたような色味をつける「いぶし仕立て」という技法があるらしい。ぴかぴかの銀色をいわゆる「いぶし銀」にするのだ。それに使うのがこの「いぶし液」。これを塗るだけで、銀が「いぶし銀」になるらしい。

これは手っ取り早い。まずはこのいぶし銀液をスプーンに塗ってみることにした。


ぴかぴかしやがって。き、緊張するんだよ!
いま、いぶしてやるからな

筆で繰り返し、まんべんなくいぶし液を塗っていく。塗り重ねて乾かすだけ。けっこう簡単だ。

いぶし液は鼻を突く硫黄の香りがする。平たく言えば超くさい。超くさいけど塗る。塗ってしまう。あ、これで紅茶飲むんだっけ。まあいいか。くさいのは別に嫌じゃない。

というか、いぶし液って毒なんじゃないか。銀は毒に触れると変色するので、昔の殿様は銀の器に食事を盛らせて毒が入っていないか見分けたという。スプーンが変色したら僕はわざわざ毒を塗っていることになる。江戸時代なら獄門、打ち首の刑になるところだ。


こすりつけるように繰り返し塗っていく(毒を)
乾かすこと少々

あ、やっぱ毒でした

液が乾いたら色が変わっていた。みなさんいぶし液は毒なので(やっぱりね)スプーンには塗らないでください。

とはいえ全体的にいぶしの風合いは出たかしら

しかし、間近でよく見るとムラがある

全体的なトーンは落ち着いたが、間近で見るとムラがある。筆でまんべんなく塗るのは難しい。特に僕みたいなムラのある人間にとっては至難の業だ。

もっときれいな「いぶし銀」にする方法はないんだろうか?


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