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ちしきの金曜日
 
高速道路フォントめぐり

なんか、かわいいんです。高速道路フォント

  道路標識のフォント(書体)をじっくり見たことがありますか。そんなことしたことない、というあなた。見たほうがいいよ。おもしろいから。ほんとに。

 今回は、高速道路のフォントに取り憑かれた人といっしょに首都高をめぐった、その顛末をお伝えしよう。

大山 顕



高速道路フォントに取り憑かれた男

公団ゴシックを再現するプロジェクトサイト「高速道路の文字を再現しよう計画」

 ぼくがそのサイトを知ったのは確か2、3年前。「高速道路の文字を再現しよう計画」というプロジェクトのサイトだ。

旧道路公団の道路標識には特殊なフォントが使われているらしいという噂は聞いていた。どんな噂だそれは、とお思いかもしれないが、だって聞いたんだもん。しょうがないじゃん。

 で、そのフォント(書体)をちまちまと手作業で再現している人がいる、とも。


 高速道路フォントとは「公団ゴシック」と呼ばれるもので、旧道路公団が独自にデザインしたものだそうだ。そのコンセプトは「時速100kmの高速走行でも文字が読める」という原則に則ったもので、そのためにとくに画数の多い漢字については工夫が凝らされている。


三鷹の「鷹」、豊中の「豊」、京都の「都」、それぞれ見比べて欲しい。うまぐあいに見やすく省略されている。そして、なんだかかわいい。

 

 上をみていただければよく分かると思う。これが「公団ゴシック」だ。

 問題はこのフォントが見やすいってだけでなく、なんだかかわいい、ってことだ。「高速道路の文字を再現しよう計画」をはじめた赤塚さん(ハンドルネーム「ぱんかれ」さんとしてその筋では有名。その筋ってどの筋だ)も、その造形の魅力に取り憑かれたクチだ。たしかに、なんだかかわいいんだよねえ。なんか、妙にぎこちないバランスで、いじらしい感じ。


みんなもダウンロードして使わせてもらおうぜ!

 で、この「公団ゴシック」こんなにかわいいなら買ってでも自分のパソコンで使いたい、と思うよね。思うでしょ。思わないの?ぼくは思うよ。

 だがしかし、パソコンで使えるようなフォントセットは存在していないのだそうだ。そもそも、その開発経緯は謎に包まれている部分も多いとか。

 赤塚さんは「それなら自分で作ろう」と思い立った。資料は実際の道路にある標識。それを写真にとって各種ソフトを使ってフォント化している。気の遠くなる作業だ。一人では資料集めすらおぼつかないので、上記サイトには画像掲示板があって、そこに全国各地で公団ゴシックの標識が使われている標識の写真をアップしてもらうよう呼びかけている。この記事読んで協力したいと思った方は、ぜひ。

 その貴重な成果であるフォントセットは上記サイトでダウンロードできる。使いたい人は誰でも自由に使える。すばらしい!上の説明画像も、ぼくが自分のパソコンにダウンロードして作ったもの。

 さらに。なにがたいへんって、この公団ゴシックは一部地域でなくなりつつあるのだそうだ。赤塚さんによれば阪神高速や首都高でも使われていたが、現在ほとんど別のフォントに置き換わってしまったとか。

 

わずかに首都高に残る「公団ゴシック」を探す旅

この偉大な人物、赤塚さんにぜひいちどお会いしてみたいと思っていたところ、過日その夢が叶った。しかも、その失われつつある首都高の公団ゴシックを探す旅に一緒に出かけることになったのだ。これはたのしみ。


東京駅前でまちあわせ。赤塚さんが車を出してくれました。
物好きな同行者もうひとりを加え、男三人ぶらりフォント探しの旅

さっそく首都高に乗ります。良い天気だなー と思ったらいきなり「あれですよ!」との声。ど、どれ?

 うららかな春の日、男三人ではじまった首都高フォントめぐりの旅。いやー、たのしみですねー、なんて談笑しようと思ってたらいきなり赤塚さんの「あれですよ!」との声。

  えっ!?どれ?どれ?いきなりなの?

トンネル入り口表示のこのフォントが公団ゴシックだ!

 いきなりなんでびっくりした。しかも高速で走る車の中から撮影するって、むずかしい。うかうかしてるとあっという間に撮り逃す。これは遊びじゃねえぞ。


別の場所にある、すでに別のフォントに置き換わってしまった「北の丸」と見比べてみて欲しい。公団ゴシックの方がかわいいよねー

 こうやって目の当たりにすると、すごくうれしい。妙な感動がある。

 「いやー、いいですね!」なんて車内は一気に興奮の渦。男三人で、渦。みんなも今週末は北の丸トンネルに行ったほうがいいよ。

 なんて、最初の突然の出会いにエキサイトしていたら、「ここも!ここもですよ!」と赤塚さん。 えっ!?どれ?どれ?


「千代田トンネル」っていう文字。おおー!たしかにかわいらしい公団フォントだ!

「ここもトンネル名称の表示看板ですね。公団ゴシックはトンネル入り口に多く残ってるんですか?」
「そうですねー。標識が古くなって掛け替えられる際にフォントが新しくなっちゃうと思うんです。たぶん、トンネルの名前って道路標識として緊急性が低いので掛け替えられずに残っている場合が多い、ってことじゃないでしょうか」
「なるほどー」

トンネル入り口がねらい目のようですよ、みなさん。

 

というか、赤塚さん、ほんとによく場所覚えてる


トンネルの中でも「これ!」との声。気が抜けない。どれどれ?

 びっくりするのは、赤塚さんが、わずかに残る公団ゴシックのある場所を覚えている、ってことだ。ほんとに好きなんだなー、このひと。

 などと感心しているまもなく、こんどは入ったそのトンネルの中で「これもそうですよ!」との声。まったく気が抜けない。どれですか?

 

この「電」っていう字。雨冠の点が省略されている! こっちは普通のフォントに置き換わっちゃっている物件。比べると公団ゴシックのかわいらしさがよく分かる。

前方にまたトンネルが。もしかしてここも?

左の「霞が関トンネル」の文字が公団ゴシック。「が」の形がかわいい。右の出口表示の「霞が関」と見比べると違いが分かる。分かるよね?

ほかには飯倉トンネルも。というか、アルファベットの表示がすごいことになってる。

こちらもトンネル名表示が公団ゴシック。

羽田のトンネル表示もこの通り。「この通り」って、みなさん違い分かってるよね?

こちらもトンネル内にいらっしゃった公団ゴシック(左)。右はふつうのフォント。まじかわいい、公団ゴシック。

左が公団ゴシックさん。右はふつうの人。「八」の字と「駐」の点々に特徴が。

この「本線」っていう字も。糸偏の省略具合がキュート!

 だんだん公団ゴシックフォントをダウンロードして使いたくなってきたでしょ?でしょ?

 社内で使う企画書の見出しとかに使ったら良いと思うよ。公団ゴシックで商談もスムーズに。


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