お風呂のお湯の中で目を開けると、人魚が見える。そんな話を聞いたことのある方はいるだろうか。
知人が子供の頃、おねえちゃんから教わった話らしい。何ともかわいらしく、メルヘンにあふれている話ではないか。その知人は人魚を見るべく、お風呂の中で目を開けてがんばったそうだ。ただ、当然見えてこない。
見えないことをおねえちゃんに話すと、「もっとよく見るのよ！」と言われたとのこと。その力説ぶりに、やっぱり本当に見えるのかもしれないと思わされたらしい。
そんなバカな、と言うのは簡単だが、大事なことは自分でやってみることだ。そういうわけで、試してみました。
（小野法師丸)）
●信じれば何かが見えてくるはず
お風呂のお湯の中で目を開けると、人魚が見える。にわかには信じられない話だが、想像力にあふれた不思議な魅力のある話だとも思う。
子供が水中で目を開ける練習をするための方便、と言ってしまえば簡単だ。けれども、その素敵な方便を実際にやってみたら、何かが見えてくるのではないだろうか。
大人も人魚に会ってみたい。人魚って、ビキニ姿のちょっとセクシーなあれでしょ。それは会いたいではないか。
そういうわけで、浴槽にお湯を張り、お湯の中に顔を突っ込んで目を開けてみた。子供の頃、こんなことをして遊んだ思い出がよみがえって、懐かしい気持ちになる。
どれどれ、本当に人魚は見えるのだろうか。ブクブクプク…。
あれっ？ほんとに見えたぞ！
お湯の中だからどうしてもぼやけて見えるけれど、これは本物だろう！
本当に見えたことで、びっくりして顔を上げる。確かにそこには下半身が魚のような姿をした、ビキニ姿の人魚が見えた。そんな気がする。
しかし同時に、釈然としない気持ちを感じたのも事実。なんかおかしい。よし、もう一度確かめてみよう。プクプク…。
今度は横になって、いかにも人魚というボーズをとっているではないか。やっぱり人魚だろ、あれは。
そういう確信をもちつつも、頭の中に浮かぶ疑問符を消し去ることができない。はっきりとおかしな点を言えるわけではないのだが、やっぱりなんか変じゃないだろうか。
うーん、もう少しよく見てみよう。ブクブクプク…。
驚いた。なんと、つけていたブラジャーをはずしているではないか。これは大変だ。
しかし、本来ならそんな状況をうれしく思ってしまったりもするのだろうが、ちっともそんな気持ちはわいてこない。釈然としない気持ちはどんどん膨らむばかりだ。
これはしっかりと正体を見極めなくてはならない。よし、もう一度だ。ブクブクプク…。
あのさ、人魚ってさ、一応夢のあるメルヘンの世界の人なんだから、あんまりお酒とか飲まない方がいいんじゃないだろうか。子供たちの夢が壊れてしまうだろう。
まあ、人魚にも飲みたいときもあるというのはわからなくはない。これは内緒にしておいてあげよう。
ただ、気になるのはそこだけじゃない。このもやもやをはっきりさせるべく、最後にもう一度だけ潜ってみよう。それ、ブクブクプク…。
今度は決定的な瞬間に出会った。何かを持って、アゴに押しつけている人魚。ウィーンという音も響いている。お前、ヒゲ剃ってるだろ！
これでわかった、もやもやの正体がはっきりした。人魚は男だったのだ。
今回私が出会ったのは、男の人魚だったのだ。確かに人魚にも男女の別があっていい。
そう思いつつも、心に去来するのはがっかり感。
「お風呂のお湯の中で目を開けると、人魚が見える」。今回の検証からすると、そう言うことはできる。ただ、それがメルヘンにあふれた素敵なものかと言うと、そうでもないと言わざるを得ない。
人魚には、男もいる。今回の実践でわかったのはそういうことだ。
最初にビキニ姿だったのは、人魚に一発かまされたということだろうか。それでもよければ出会えるかもしれませんので、みなさんもぜひお風呂のお湯の中で目を開けてみてください。
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