「ひらがな」は漢字を崩し字にして作られたもの、と小学校で習ったが、さらにそのまた昔は、漢字をそのまま「かな」として使っていたらしい。現代人から見ると、実はそれってすごくかっこいい。全文漢字なのにかな表記。そこで二種類しかないかな文字「ひらがな」「カタカナ」に加えて、第三のかな「般若仮名」を考案し、めっちゃカッコイイ「かなフォント」に仕上げました!
これで日本語全てを、仏教風に書き替えます!
(text by 加藤まさゆき)
出会いはJICAの冊子だった
ある日、勤務先でもらった一冊の本が、僕に衝撃を与えた。
JICAこと、「国際協力機構」が発行する日本語ガイド。
中国人の交換留学生の来日に合わせて配られた、『新にほんご21』という冊子。中国人向けに、簡単な日本語表現が書いてある。 中を開いて見てみよう。
僕はこの手の冊子が好きだ。現実からちょっと遊離した奇妙な言葉たちが素敵で、しばし眺めては楽しむのだが、今回はかなり違った。この本の中に、僕がこれまでに見た事の無い日本語表現が記述されていたのだ。以下の部分をちょっと注意して読んで欲しい。
衝撃の中国仮名
わかるだろうか? 3段ずつの文字列の最上段に書いてある赤下線部は、日本語の発音を「漢字によるふりがな」で表したものになっている。 つまり、 「さいふを なくしました」 「ばっぐを わすれました」 となるわけだ。他の例も見ていこう。
「桑」を「さん」と読ませた「ゆりこさん」もいいけれど、型式である「501」をあらわした「勾賊楼以七」もかなりクールだ。
ほのぼのとした雰囲気を叩き壊す「口都摸桑」もさることながら、「なんさい」をすっきりとまとめた「男塞」も悪くない。
地名ももちろん表せる。見慣れたはずの「阿克哈巴拉」が異様にかっこいい。
すいません。これはキャプションでネタ使いたかっただけです。
これまでに見たことの無い表記がとっても斬新で面白い。僕はこの冊子を1時間でも2時間でも読んでいられる気がする。皆さんはどうだろうか? (面白いと思えない人は、今回の研究を面白いと思えない可能性が高いです……。すいません)
ところでこの本には五十音対応表も載っていて、以下の表のように五十音は「中国ふりがな」に置き換えられる。
「中国仮名」五十音対応表
さあ、自分の名前の中国仮名を探してみよう!(クリックで別窓に拡大)
日本語の音が全て漢字で表されており、これはこれで、新しい日本語表記体系として一つの完成を見ている。すばらしい。
で、僕はこの「中国仮名」を読みながら、「これ、万葉仮名に似てるなぁ」って思ったのだ。 万葉仮名とは何か?