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フェティッシュの火曜日
 
この店でいちばんすっぱい梅干しを頂戴。

よだれタイム

 すっぱい梅干し。

 梅干しに対してほとんど枕詞のように使われる「すっぱい」という表現だが、僕は今ひとつ実感が湧かないのだ。

 梅干しって、しょっぱくない?

 

 (text by 石川 大樹



梅干しって本当にすっぱいの?

 すっぱいってどういうことだろう?梅干し以外にすっぱいものを考えてみると、レモンとか、酢とか、まだ青い果物とか。これらと梅干しの味が、僕はどうにも結びつかないのだ。むしろ梅干しって、すっぱいというより塩辛い、しょっぱいイメージがある。

 もしかして、今まで僕が食べてきた梅干しがたまたますっぱくなかったのかもしれない。ここはいろいろなお店をめぐって、いちばんすっぱい梅干を出してもらおう。本当にすっぱいと思える梅干しに出会えるかもしれない。

 

いつもお世話になっております

イトーヨーカドー

 まずは大型スーパー、イトーヨーカドーにやってきた。

 イトーヨーカドーの梅干しコーナーは、漬け物コーナーの一角にあった。気になるラインナップのほうは、なんといきなり大充実の24種類。え、そんなに多いの?この品揃え、やっぱり日本人って梅干し大好きだったんデスネー。自分の知らなかった日本に気づいて軽く外国人気分で、いまなら梅干しのことをウメスターと呼ぶのもやぶさかではない。


ぎっしり敷き詰められた24種類

でかいポップで主張


 梅干しの種類のことなんてあまり意識したことがなかったのだが、こうして一つ一つじっくり観察すると、梅干し界の勢力分布が見えてくる。

 味は、しそ味、はちみつ入り、うす塩の3種類が多い。産地は紀州がブランド、梅の品種は南高梅というのがブランドのようだ。そしてすべての梅干しに塩分表示があって、この店では最低3%、最高が20%。多いのは5%〜13%のあいだ。

 …と言われても、酸っぱさについての手がかりはどこにもない。さあ、すっぱいのはどれだ?


まろやかじゃだめだ

すっぱさ、ほんのりじゃ困るんだ


うす塩。やっぱり塩が濃い方がすっぱいのだろうか。それともしょっぱくなるだけか

はちみつ入りはいかにも甘くて、すっぱくなさそう

 

すっぱさは店員を困らせる

 自分で見ていてもよくわからない。さっさと店員さんに聞いてみよう。

石川:梅干しの、できるだけすっぱいのが欲しいんですけど…

店員:そうですねー。すっぱいの…、塩分は書いてあるんですけど、すっぱさを表す数字っていうのがないものですから…。
(商品パッケージを見ながら)さわやかっていうのもね、根拠がわかんないですし…まろやかっていうのは違いそうですけど…
はちみつ、うす塩は違うので、しそ系ですかねー…


セブンプレミアム「紀州産南高梅しそ漬け」


 やたら「…」の多い描写になってしまった。僕の質問は店員さんをかなり困らせてしまった感じだ。最後はしそ系2品で悩んでいたのだが、かなりの長考となったため、僕の独断でオリジナルブランドのセブンプレミアムに決めさせていただいた。

 イトーヨーカドーのチョイスの決め手は、しそ味であった。他のスーパーではどうだろう。

 

 

 

いつもお世話になっていません

成城石井

 次は、高級スーパーの成城石井だ。

 輸入食品が多いイメージがあったので、「ニッポン!」な感じの梅干しは日陰者かと思ったのだが、実際にはレジ前のけっこういい位置に陣取っていた。

 さすがに高級スーパーだけあって、梅干しも全体に値段は高め。ラインナップは17種類だ。


レジ前の必ず通る場所に位置取り。好立地です

カップ焼きそばみたいなカップに大量の梅干し


 一つ一つの商品にポップで解説が付いているのだが、そこで目を引いたのが「フルーツ感覚」の文字。あまい梅干しだ。

 金持ちの人たちは、ご飯を全部食べ終わってからデザートに梅干しを召し上がっているのか。予想だにしなかった事態。


問題のポップ。「フルーツ感覚でお召し上がりいただける…」
こっちにも。梅干しが苦手なら本物のフルーツを食べればいいじゃない!

他には桜の香りのこんな小粋な商品も

こちらはなんかおしゃれなパッケージ

 

科学を駆使した梅干登場

 なんだか個性的な梅干しが多い。待てよ、フルーツ感覚に気を取られてしまったが、もしかしたらすっぱい方にも強烈なのがあるかもしれない。聞いてみよう。

石川:できるだけすっぱい梅干しが欲しいんですけど…

店員:塩分の強い梅干しであればすっぱいと思いますよ。あるいは、この「匠の梅」はどうでしょう。普通は加工の途中でクエン酸が失われるのですっぱくなくなってしまうんですが、特殊な技術でクエン酸を残したままにしているんです。

あ、それ珍しい。そっちにする。


いいとこどり「匠の梅」

梅の有益成分=すっぱさ、に違いない


 パッケージからして「いいとこどり」な、匠の梅に決定。しかしまさか今回の梅干しの企画、「特殊な脱塩技術」なんて先端っぽいものが出てくるとは思わなかった。これは期待できそうだ。

 ちなみにイトーヨーカドーで決め手となったしそ味には、こちらでは一切触れられず。これは選ぶ人次第で、かなり票が割れそうだ。面白くなってきた。

 

 

たまにお世話になっております

近所のちょっといいスーパー

 家の近所にあるスーパー。イトーヨーカドーよりは高級で、成城石井よりは庶民派、ちょい高級ポジションのスーパーだ。

 そしてこの店がすごい。梅干しコーナーを2箇所に分けて展開しているのだ。かなり力が入っている。


梅干しコーナー1。いろんな梅干し&梅製品を集めたコーナー

梅干しコーナー売れ筋の梅干しだけを集めたコーナー


 ここにもかわった梅が色々あったのだが、他と重複するものもあるので2つだけご紹介。


お買い得のつぶれ梅はここへ来て初登場

昆布風味の梅干し

 

昔ながら=すっぱい

 さて、恒例の頂戴タイムだ。

石川:すっぱい梅干しが欲しいんですけど…

店員:うーん、最近はあんまりすっぱくないのが多いですからね…。
こっちの田舎梅干しの方がいいんじゃないですかね

と店員さんが指さした先には…


また梅干しコーナー!

 なんと、そこには第3の梅干しコーナーがあったのだ。梅干しだけで売り場が3つも。梅干しに対するすごいこだわり。あとで数えてみたら、このスーパーには全部で28種類もの梅干しがあった。

店員:このへんは昔ながらの梅干しですから、すっぱいと思いますよ。

 特にどの商品が、というのは言われなかったので、店員さんの「昔ながら=すっぱい」説にのっとって、こちらをチョイス。


三年蔵で熟かせた「小田原梅干し」

 パッケージにも赤字で強調される「昔ながらの」の文字。

 「昔ながら=すっぱい」。ここへきて急に、なんだか安心するような説が飛び出した。すっぱい梅干は日本人の心であるようだ。(しかしなぜ僕はそこに参加できていないのか)

 ちょっとすごそうな技術を使った成城石井の梅干しとは対極にあるパターン。果たして軍配はどっちに上がるのか。

 

 

最近は刺身まで売ってますよね

近所のファミマ

 最後は近所のコンビニだ。ファミリーマート。


ゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴ

 特に載せる写真がなかったので、登場シーンを無駄に盛り上げてみました。コンビニには梅干しは1品しかなかったのです。


紀州産南高梅はちみつ入り

 うす塩だし、はちみつ入りだしで、なんだかあんまりすっぱくなさそうなやつだ。

 ちなみに他のファミマにも行ってみたのだが、置いてあったのは同じ梅干しであった。つまり、これが、世界に14,606店舗(2009年1月31日現在)を展開するファミマのアンサーなのだ。国際企業ファミリーマートの考える「ニッポンの心」が、ここにある!(のか!)


 

 
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