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フェティッシュの火曜日
 
寝台車に興奮しすぎ・見てきてジャーニー岡山編


 3月の「見てきてジャーニー」ライターに立候補した。屋内ばかりの仕事柄、たまには遠くに行ってみたい。しかも誰かさんの「ちょっと見てきてほしい」ものを「ちょっと見てくれば」いいのだ。こんな楽しげな、人助けにもなる旅行ってあるか。

どうせなら行ったことのない、縁のない遠地に行こう。ただし当方ペーパードライバーにつき、路線網からあまり離れてないポイントに「見てきてスポット」が集中してると、助かるね。

「ちょっと見てきて」コーナーで、各県ごとに探索してみた。お!いいとこ発見。岡山である。ちょうどいい遠さ。そして広島・兵庫には行ったことあるがそのハザマの岡山には足を踏み入れたことはない。いずれツチノコ探しに行こうと思っていたが、とりあえずは「見てきて」って頼まれたとこ、見てこよう。

しかも、おおお、岡山ならアレに乗っていける!おひょー!こりゃ楽しい!
何のための旅だか、うやむやになったところで出発だ。

見てきてジャーニーとは?
「ちょっと見てきて」のなかで、なかなか見てきてくれないところを、デイリーポータルZのライター陣が旅をしながら見てくる企画です。

乙幡 啓子



アレとは、サンライズ出雲のことだ

通常の8割増くらいでジャーニーが楽しみで仕方なくなった理由、それは寝台電車「サンライズ出雲」だ。出雲市行きのサンライズ出雲と、高松行きのサンライズ瀬戸が連結されたこの電車は、かの地・岡山で停車し、それぞれの方向に散って行くのである。

以前からずっと、寝台車に乗ってみたいとひそかに想いを寄せていた。個々に与えられるベッド、あの狭さ、夜通し走る列車・・・乗るなら今しかないな、うん、今しかない。「見てきてジャーニー」の任務が、ほら、銀河のかなたに飛ばされていくよ母さん。

嬉々としてチケット予約、そして旅行の準備にとりかかる。そしてあっという間に当日、22時、東京駅。食料の買出しで旅情が後回しになりつつも、自室へと収まる。寝台車は会社帰りの通勤客を置き去りに、定刻通りに出発した。そのころ私は裸足でベッドの上、である。


舞い上がっていて電車正面撮るの忘れた。しかしこの個室たち!1室1室ねぎらいたくなるよ、乗客を。
おお、サスペンスドラマでしか見たことのなかった廊下が!

おお、素晴らしくきれい!一生着くな目的地。

俯瞰。地面がA3用紙くらいの広さ!狭い!楽しい!(私は狭いところが大好きなタチです)

列車に乗りたい、ただそれだけのために旅をした、かの内田百閨B気持ちわかるぞ、百閧フ。乗り物に乗っているときはウキウキなのに、自分で設定した目的地にもかかわらず、到着してしまったときのあのやるせない思いは何だ。

真の贅沢とはスパリゾートに1週間か?アロママッサージか?地の無農薬野菜を使ったシェフのスペシャリテか?のぞみなら3時間半、飛行機なら3時間で着く旅を、わざわざ夜行で8時間半かけて行く、それが贅沢であると今は声に出していいたい。いやスペシャリテももちろん食べたいな。



目的地まで車内販売など一切無しと聞いて、過剰防衛した結果だ。

ホームの諸君、ともに出発を祝ってくれたまえ。

いつものチョイス、ビールに崎陽軒のシューマイ。

ただ夜中の郊外を走るため外はほぼこんな感じ。

寝台車での初めての夜を興奮気味に語ってしまったが、もちろん仕事は忘れてはいない。「目的地着いたらやるせない」などと誰が言った。

朝6時半、岡山に到着。車内ではビール飲んで酔って1時にバタンキュー、4時間半寝て茫漠としたまま身支度に手間取り、あわててホームに降りた。出雲行きと高松行きの車両連結解除にうっかり立ち会えたぞ。



お、この形状は!

連結器のカバーである。カパッと。私ならこの類のモノ、どっかに失くす。

1件目の任務:うろおぼえの幸福の木を探して

戦闘、開始。にしてもまだ6時半である。それに二日酔いというか、夜行列車で飲んで寝て朝を迎えたら何日酔いというのかはわからないが、とにかく頭がずっしり重い。何か食べる気にもならん。うぷっ。

ならば、岡山駅から瀬戸大橋線で30分かかるが、まずはここに行ってしまおう。この「見てきて」が妙に気になっていたのだ。うぷっ。


見てきて!投稿
[岡山県] 個人的、卒業記念樹!短大に勝手に植えた竹は今・・・ (2007.11.21)
投稿者 まひー さん
どんなところ?

2004年、短大卒業とともに部屋を引き払ったとき、鉢植えの観葉植物(たしか、幸福の木とよくインテリアショップに売ってる30センチくらいの竹)の処分に困り、勝手に短大の駐車場に植えてきました。
あれから3年…元気に育ってますか?
見てきてくれたら、うん。嬉しいです。

だいたいの住所 岡山県倉敷市児島稗田町

>> 「見てきて」ページはこちら



ホームのかなたに瀬戸大橋線がぽつんと待っていた。

うー。あー。 ボーッとする。

しょっぱなから重い頭をかかえての旅、まことに面目ない。今度からショート缶2本くらいでやめときます。

ただ、目的地最寄の駅で降りたとき、酔いも一瞬きれいに忘れたくらいの衝撃が待っていた。

ホームを降りたらこの景色である。



この大量の空間を目の前にして、私はどうしたらいいのか。とりあえず叫ぶか。


ホームから自動改札機まで、長い階段で直接つながっている。ぜひともロングドレスで歌いながら降りたいもの。


1回転して日本情緒あふれる駅。


有事の際には変型して全長1kmの巨大ロボになるとかならないとか。

とにかくあきれるほど壮大な駅に直面して、笑うしかない。旅の始まりに、こんなすごい駅物件に出会うとは。コンクリ色一色で、構造の面白さがシンプルに味わえる。ここは「駅界の素うどん」か。

ここ上の町(かみのちょう)駅は、今Wikipediaで調べたら「1日平均の乗車人員は356人」だそうだ。JR東日本で言えば浜金谷駅あたりと近い数字、って言ってもよくわからないな。学校など近隣にある割には少ないような。無機質なイメージにさらに拍車がかかる数字である。

駅を見に来たんじゃなかった。さあ、まだ見ぬ短大へと急ごう。



妙に語りかけるタイプの案内板、親切である。

しかし道程はこんな感じで里の秋、いや冬。

歩いても歩いてもそれらしき建物が見当たらず、通りかかったおじいさん(犬の散歩中)に道を聞く。フガフガ私のにおいを嗅ごうとする犬の綱をひっぱりながら、「ああーこのまままっすぐだよ」と教えてくれる。

犬に元気を得て、なおも歩くと件の短大は見えてきた。



歩いて20分、ようやっと見えてきた。

そしてここが件の駐車場か?

歩いてきた道からでも、駐車場の中はうかがえる。できるだけ目をこらして見回したが、それらしい木は見当たらない、気がする。

学校の敷地内では、何かの部員たちが、大会とかの準備だろうか、体育館(講堂?)に搬入作業をしている。私は怪しまれないよう、駐車場だけさっと見回って出てきたが、やはりあのまっすぐな観葉植物っぽい木はなく、いかにも学校とかの植え込みに使われそうな植栽しかなかったです。

というわけで、まひーさん、校務員さんが「あ!何か植えられてる!」と気づいてとっくに引っこ抜いたのか、あるいは単に私が見落としたかは定かではないですが、こんな結果でした。

でも個人的にはあの駅の存在を知っただけでも満足だ。静かな里に場違いな構造体、シビれる。



いきなりだが酔い覚ましの肉うどん。


頭もだんだんとではあるが起きてきた。でもまだ本調子にはいま少しだ。がんばろうね。

いったん岡山駅へ戻って、周辺で「見てきてスポット」を消化しよう。次はあのライターさんからのリクエストスポットも見てくるよ。


>> 結果は こちら に投稿しました


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