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フェティッシュの火曜日
 
消しゴムはんこで般若心経を彫る


 最近になって「消しゴムはんこ」にはまった。消しゴムあるいは同じ材料のゴム板に、カッターナイフではんこ絵を刻む、アレ。

以前から、用もないのに「篆刻セット」を買って、ちまちま「乙」と彫ってみたりして微笑んでいたが、趣味としてはどうも続かず。ところが「消しゴム」で目覚めた。すばらしい素材、ゴム。ゴム最高。

どうにか、仕事にかこつけて消しゴムはんこを作りたく、今回の企画とあいなった。「私が消しゴムはんこを彫りたい!」そのための記事かもしれない。

乙幡 啓子



これ、ライフワーク候補

はまるきっかけとなったのは、先月行われた、拙著「妄想工作」の書店でのイベント。サイン用に、当日特製のはんこを作ってみたのだ。そしたら意外といい出来だった。まあ題材はアレだけどな。


上は赤いマフラーした宇宙人、下は不敵に笑う邪鬼。何がなんだか。

けっこう複雑なはんこが作れて満足、なだけでなく、彫るのはすごく面白かった。今までにも年賀状用に消しゴム板を買ってちびちび彫ったりしたことはあるが、今回は違う。これ、いろいろとできそうじゃないの。

というわけで、さっそく材料とお道具を買ってきた。ハガキ大のゴム板(700円弱)。そして新たにデザインナイフと、オール金属製極細U字形彫刻刀も導入した。形から入るのが吉。


板は色つき2層構造で彫りやすい。オール金属の彫刻刀は重みが丁度よく、彫ってて気持ちいいのでおすすめだ。
そして唐突な白地図。

 

県境をゆく

今回は「できるだけ消しゴムはんこの世界に長くいたい」という正直な記事だ。なら例えば47都道府県を彫っていけば、いつまでも消しゴムと一緒にいられるのではないか!

「趣味」「手芸」というものは、その成果(何かのコレクション、手編みのセーターなどなど)を目的に身を投じるものだとは思う。けれども「今この両手を何かに従事させたい!」という欲求も、立派な目的といえる。手は常に何か「いじるもの」を求めている!

つい興奮してしまったが、まあ落ち着こう。まずは図案をトレーシングペーパーに書き写し、それを消しゴム表面にこすりつけて転写するところから始める。


岩手県。さあ来いリアス式海岸。
さあ来い気仙沼港。カッターのお尻で消しゴムに転写中。

次はお楽しみの「彫り」である。消しゴムはんこを作ったことのある人ならなおのこと、昔授業中に消しゴムをカッターで切り刻んで遊んだことのある人はおわかりになろう。ゴムにサクサクすいすいとカッターを沈ませる、あの快感を。


線に沿って、V字形になるように切り込む。おお、カスを彫り取るときの快感よ。
不要な部分はなるべく印面に影響しないようにカット。

怒涛の47都道府県。島嶼部は主なものしか再現してません、あしからず。

こうやって47都道府県をバラバラに眺めると、北海道の大きさが際立つ。消しゴムもその分たくさん消費してオサイフに痛いので、より記憶に残るという教育効果もあるとかないとか。

さて、はんこにはもうひとつのお楽しみがある。そう、はんこなので「判を押す」のだ。当たり前だ。

この都道府県はんこの場合、パズルとしての楽しみもある。原図を見ずに、どれだけ本物に忠実に日本国土を再現できるか、ポンポンと押してみよう。


満足。ここまではまあいい。問題は本州からだ。
県境が、なるべくピタッとはまるように、慎重に。

うーん、地図好きの自分にはなんとも楽しい。が、ふつうに売ってる「都道府県パズル」とは違い、わかってるとこだけを埋めておく、ということができない。そして上下左右を間違えるのはもとより、ちょっとの角度でもズレで押してしまうと、あとでどんどんそのズレが大きくなり、国土が荒廃してしまうのだった。


なんだか「天保年間に作成された日本全図(○○博物館蔵)」みたいな趣である。

だいたいの配置は間違っていないのだが、正確に接続することができず、特に西日本。見慣れない県の形が続いて、わけわかんなくなった。


西日本の方々には、いろいろ言いたいこともありましょうがお許し下さい。
特に福井と滋賀あたりがひどい。重なった。ひと県分、土地が余ったよ。

さてこのように、ちょこっと遊んでみるつもりで作成した日本地図。彫るのにまる2日かかったが、全然苦にならない、むしろ「もっと!もっと!」という気持ちだ。新聞社の活字、全部請け負ってもいいとまで思う。

活字?おお、それならアレだ、アレがいい。修行も兼ねて一挙両得だ。


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