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ようやく漕ぐぞ!
気合いを入れてまたがった我らがマシーンはママチャリにもほどがある、と言いたくなるくらいにママチャリだった。ハンドルがどういう意図で設定されているのかわからない方向を向いている。一応3段変速が付いているのだが、ギアチェンジをしても特になにも変わらず、気にせず走っていると「そういえば!」という感じでガクッと「入る」。
しかし今はこいつが相棒だ。頼むぞ、ママチャリ、途中で壊れんなよ! |
頼むぜ、相棒! |
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ピットレーンを出て本線に合流するとすぐに目の前が大きく右斜め下に曲がりながら落ち込んでいる。これが第一コーナーなのだ。道路脇にはまだ雪が残っているのだが、それ以上にコーナー横に待機する救急車に目を奪われた。
急いで前傾姿勢を取り、ハンドルにしがみつく。するとカーブに吸い込まれるようにまったく漕がなくてもスピードが上がっていく。カーブを曲がりながらのブレーキングはタイヤが流れて危険なので、できることなら漕いで動力を伝えておきたいところなのだが、町乗り用のギアでは速さに足の回転が追いつかないのだ。
そうこうしているうちにハンドルがガタガタ振動し始める。「気がついたときには制御不能に」の言葉がちらちらと蘇ってくる。 |
ピットレーンから出ると。 |
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すぐに第一コーナーが待っています。 |
脇に逸れていったタイヤ跡が生々しい。 |
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景色が流れる、車体ががたつく、凍った風が顔を突き刺す。びくつき両足で路面を触りながら前半の下りをなんとかこけずにやりすごした。
生きた。
しかしほっとしたもつかの間、下った次にはちゃんと登りが待っているのだ。その迫力や山の如し、そんな気合いの入った登りだった。 |
ここまでが下り。ということはその後は・・ |
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ずっと登り。 |
ただひたすらに、登り。 |
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前半の下りで転ばなければレースは後半がすべてと言ってもいいだろう。極端な登り坂に加え、富士山から吹き下ろす凍った風がずっと僕らを押し返し続けるのだ。周回を終えたドライバーが口を揃えて「風が・・」と言っていた意味がようやくわかる。透明の壁が目の前にあるみたいなのだ。当ると痛い。 |
風が痛いなんて・・ |
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コーナーはこの状態なのでラインを・・とか考えている場合ではない。 |
登りの先には富士山が見えるので「まさかこのまま登っていくのでは!」と思う。 |
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これ富士山登ってるんじゃないのか、と思えるくらいの坂、連続コーナーそしてママチャリには深すぎるバンクが次から次へと登場してレーサーの行く手を阻む。自転車を降りている人がほとんどだったが、僕らのチームは意地でこぎ続けることを命ぜられていたため変な角度のハンドルに身をよじりながらも坂に立ち向かっていった。だけど正直降りて歩いている人とさほど速度は変わらなかったと思う。エンジンすげえ、これが感想だ。
「パナソニックコーナー」と呼ばれる最終ヘアピンをだくだくになりながら抜けるとあとは延々と伸びるホームストレートが待っているのだが、僕にはもうここを走る体力は残っていなかった。そのまま右へ逸れピットレーンへと流れた。 |
エンジンってすげえな! |
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右へ逸れるとチームメイトの待つピットレーン。 |
まっすぐ進むとまた恐怖の第一コーナーが待っている。 |