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ひらめきの月曜日
 
氷を履いたらどこでもスケート


冬になり、凍った水たまりをみると、ついアイススケートの真似ごとをして滑って遊んでしまう。子供のころのような大胆な前傾姿勢をとれないのは悔しいが、まだまだ現役といって通用する滑りのはずだ。
もっとたくさん滑りたい! そうおもうのだけれど、ぼくが大人になってしまったからなのか、凍った水たまりは昔よりも小さく感じられ、叶わぬ願いに悲しみがトリプル・ルッツするばかりだった。
だがそんなとき、ある妙案が浮かんだ。
「そんなに滑りたいなら、自分の足を氷にすればいいじゃないか」
シンデレラはガラスの靴を履いて幸せを手に入れた。ならばぼくは、氷の靴を履いて夢を手に入れよう。

なんだこの書き出し。

櫻田 智也



氷の靴を履くために

半分寝ているみたいな導入のうえ、受験シーズン真っ只中に「すべるすべる」と連呼するのもどうかとおもうが、とにかく氷を履けばどこでもスケート遊びができる。そうおもったのだ。
「無邪気さと不憫さはいつも背中合わせである」という言葉があるように、この後なんとなく不憫な展開になることも予想されるが、あえていろいろ考えずに、ここは氷を履くことに全力を傾けたい。


全力を傾けた結果


いったそばから不憫さ全開である。

氷をちょくせつ履くわけにもいかないので、靴ごと氷でかためてしまい、それを履こうというおもいつきだ。


注水


あとはこれが凍ればできあがり。水たまりのような天然のリンクに少しでも近づけるべく、冷凍庫ではなく外にだして凍らせることにした。


屋外に


寒い日がつづくとよいのだが。


気になる

 

なかなか凍らない


ちょっとさわってみたりなんかして


翌朝、出社前にどうなったか確かめてみる。表面はかたい。氷がはっている。



ただ、ちょっと力を入れると割れてしまいそうな感触だ。まだまだスケートリンクとは呼べない。わかさぎ釣りにも早いだろう。とりあえずこのままにして様子をみることに。
出社すると同じアパートに住んでいる先輩ふたりから、「なんか変なものあったけど」と訊かれた。


夜になって


夜になり、かなり気温が下がってきた。これは期待がもてる。
さわってみると、朝とはちがってかなりの手ごたえ。もしかしてカチンコチンか? 高鳴る胸。だが長靴の部分を指で押したとたん、できた隙間から水がしみだしてきた。
どうやら凍っているのは表面の数センチほどだけで、その下は余裕しゃっくり水なのだ。


気泡も入ってしまった


長靴の側面に生じてしまった気泡。まずい。だが下手にいじるとさらに面倒なことになりかねない。
大変悩ましいが、この状態でそっと屋外に戻した。


寒くなれ

 

待ち切れずに

外にだして3日目の夜、氷の靴にちょっと足を入れてみることにした。


家元?


とりあえずそのへんにあった服を着こんだら、うろ覚えの立川談志の物真似みたいになってしまった。


罰ゲームを受ける家元


すごい。問答無用に冷たい。氷の大地だ。これは、なんとなくいけそうな気がする。もしかしたら完成してしまったのではないだろうか。
気が急いていたぼくは、いてもたってもいられなくなり、部屋にバケツを入れて水をかけていた。


いよいよとりだす



できた! のか。いや、じつはバケツからとりだす際、氷の中から水がこぼれでた。まだ完全に凍結してはいなかったのだ。ここ数日、寒いとはいえ夜でもマイナス5℃程度。これだけの量の水を凍らせるに充分な冷え込みではなかった。だが、少なくとも形にはなっている。
案外いけたりして……そんな期待を胸に、ぼくはプライベートリンクに足を踏み入れた。



びっくりしてカメラマンも唐突に撮影を終えている。壊れたことに驚いたのではなく、深夜のアパートに鳴り響いた破壊音に焦ったのだ。

砕け散った氷。覚悟はしていたが、やはりショックである。
水が抜けた部分が空洞となり脆くなってしまった。それ以前に、長靴を入れたまま凍らせるというのに無理があったかもしれない。氷に厚い部分・薄い部分ができるし、中に気泡が入って空洞も生まれやすい。

なにをまじめに反省しているのかよくわからないが、とにかくこの作戦は失敗だった。

 

それで結局できたのか

そう、失敗ばかりをだらだら書いても仕方がない。結局できたのかできなかったのか、要はそこである。
前置きはこれくらいで充分だろう。これがスケートリンクを履く男の写真だ!


う、浮いてる!?


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