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ちしきの金曜日
 
知らない業界インタビュー

業界1:フィルター製造・販売

お名前:井出直人さん(37歳)
お勤め先:日本ミリポア
この仕事に関わってから:7年
主な仕事:医薬品・食品製造時に使用するフィルターの販売

−−−すいません、さっぱりイメージできないのですが

液体の薬を作るときに、菌を取り除くためのフィルターです。熱をかければ菌は死ぬんですが、そうすると薬も効かなくなるので、熱をかけずに取り除くためのものです。扱っているのは世界で10社あるかなぐらいですね。国産で医薬品につかえるフィルターはありません。

−−−食品用もあるんですね

ミネラルウオーターやビールの製造で使います。ミネラルウオーターは菌を全部取れって言われるので厳しいです。たとえばビールだと酵母と乳酸菌をとるって分かってるので厳しくない。酵母ってわかっていたら0.65マイクロメートルの穴にすればいいって決まりますから。

−−−菌の大きさがだいたい分かるんですか?

だいたいわかります。言われる菌はだいたいきまっているので。0.45マイクロメートルの穴だと乳酸菌が完璧にとれるかどうか微妙かな、とか。ウイルスをとるものは穴が20ナノメートルです。

絵で描いて説明してくれました

−−−憶えることが多そうな仕事ですよね

製品の知識もそうなんですが、法律を憶えなければならないんです。アメリカのFDA、日本の日本薬局方という法律があって、求められる性能とそれを証明する方法が書いてあります。

最初、この会社に入ったときはぜんぜん分からなくて、お客さんの質問に答えられるようになるまで2年かかりました。新卒で入った社員もいますけど、苦労していますよ。

−−−前職はなにをしていたんですか

害虫駆除です。ネズミとかゴキブリとかシロアリとか。どうやったら虫が捕れるかという機械を作ってました。ネズミは頭いいので難しいです。いまの菌のほうが楽ですね。みんな科学に従って動いてくれるので。ネズミとかゴキブリとか、どこにいるか、何匹いるか分からないのを取れって言われるのに比べたら楽です。

−−−リプレースとか一般の営業的なこともあるんですか

ありますよ。製品そのものの値段だとあまり変えてもらえないですね。フィルターを小さくする、液が残りにくい形にするとメリットを感じてもらえますね。

−−−小さいのがいいんですか?

薬って1回製造して、高いのだと何億って金額になるんです。フィルターにちょっと液が残ってるだけでも、それがたいへんな金額になるのでもったいない。フィルターに液が残らないと、全体のコストが下げられるんです。

−−−フィルターの穴ってどうやって開けるんですか?

ホットケーキみたいな感じです。樹脂に溶媒を混ぜてあっためると溶媒だけ蒸発するのでそこが抜けるんです。ホットケーキの断面って穴だらけですよね。あれのすっごくこまかいものだと思ってください。

これが商品です

知ったかぶって人に言いたくなったこと

・性能よりも法律が定める規格に準拠していることが大事
・菌よりもネズミを捕まえるほうがたいへん
・薬は高いので、液が残らないようにすることアピールポイント

ホットケーキと同じ、菌より小さい穴だと菌がとれるという井出さんの説明はとてもわかりやすかった。しかしどれも顕微鏡の世界の話なので自分がわかった気になってるだけなのではと思ってドキドキした。


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