いよいよメッセージの交換だ
僕のイメージしていたメッセージの交換はラブレターのようなものにちいさな字で「ありがとう」と書いたものをそっと交換するというものだった。だが実際は町長が送別の辞を述べるものであり、普通に考えればそれもそうで、なんであんなにラブリーなものを想像していたのだろうか。
勝手な落胆をよそに町長は古代の人たちに学んでよりよい芝山を作り、また来年もはにわ祭りを開催しよう、という旨を述べた。でももしかしたら手のひらに「ありがとう」と書いていたかもしれないし、ひょっとすると町長は泣いていたのかもしれない。こちらも寒い中待ってたのでそうだったことにしてもらいたい。
さようなら、古代人
対して国造さんは、今日一日時間がすぎるのを忘れるほどだった、と始まり、もう要約すると「ありがとう」ということだった、やった。
話が終わると「昇天する」ということなのか、国造さんは「あーおーうーえーいー」と声明のようなものを唱え始めたのだが、さらに「かーこーくーけーきー」「さーそーすーせーしー」と来て、あ!五十音!とみんなの心の中にひらがなの表が浮かんだ。なぜ50音をひっくり返しながら昇天していくのかという疑問も起こらず、そのときはただ「このまま一行ずつ進んでいくと『ん』はどういう扱いになるのか?」ということだけを考えていた。
「やーよーゆーえーいー」、「らーろーるーれーりー」先ほどからほんとに一行ずつ唱えていてけっこうな時間がかかっている。ここまでくれば全員の頭に「ん」はどうなるのか?という疑問が浮かんでいるはずだ。
そしてワ行。「わーをーうーえーいー」と来て、そうか、さすがに「ん」はないのか、とみんながほっとしたような瞬間に「ん!」。
言った!「ん!」って言った!だから何だと思われるかもしれないが、古代の格好した人が「ん!」って言うのだ。変だろう。いや、変じゃないか。もうわからない。だってそもそも古代人って時点でわからないじゃないか。 |