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ひらめきの月曜日
 
土管のある風景
誰もが心の中に持つ景色。それが土管広場

藤子不二雄マンガの世界には土管のある空き地の風景がしばしば描かれる。

実際に自分がのび太やジャイアンと同じ年齢だったころ、遊んでいた広場や公園にそんな土管はなかったし、これまでも目にしたことすらない。

なのに頭の中には、あの土管のある原っぱの風景が刷り込まれているのだ。幼馴染のさっとんと土管でかくれんぼした(してないけど)あの頃をありありと思い出す。

マンガの世界で見ただけなのに、心のアルバムには刻まれている土管広場。そのギャップに折り合いをつけるべく、リアルな土管広場を実際に見てみたいと思ったのだ。

(text by 榎並 紀行



記憶の原点はドラえもん

現代の設定がどんなことになっているのかは知らないが、僕が夢中になっていた20年前のドラえもんでは、近所の空き地がのび太ら子どもたちの社交場として度々登場していた。

そこには、滑り台やジャングルジムといった遊具ではなく、ピラミッド型に積まれた土管が置いてあった。ガキ大将であるジャイアンは土管をステージに度々リサイタルを主催し、ママに叱られたのび太はよく土管の上で半べそをかきながら、ふて寝していたように思う。


遊具としての土管は絶滅危惧種

現実、かつてはそうした土管のある広場も珍しくなかったようだ。ただ、それらは遊具としてではなく水路工事用の資材として置かれていたものらしい。

では実際、遊具としての土管は現代に残っているのか?
検索してみるとやはりそう多くはないようだ。土管のことを「絶滅危惧遊具」などと称しているサイトもあった。

少ない情報を頼りに、いくつかの土管広場を巡ってみることにした。


まず、訪れたのは葛飾区立石にある本田公園という小さな公園

京成押上線の京成立石駅から徒歩5分の場所にある、本田(ほんでん)公園。ここに、こじゃれた土管の遊具があるという。

ここはドラマ『高校教師(リメイク版の方)』のロケ地にもなった場所らしく、禁断の恋に落ちた教師役の藤木直人と生徒役の上戸彩が、くだんの土管で夜な夜な逢い引きしていたというのだ(逢い引きって!)

僕が思い描く土管広場のテイストとは異なるものの、まずはこういうものから攻めていこうと思った。のだが、

土管は〜、ありませんね・・・

ない

ない。土管どころかブランコも鉄棒もない。遊具といえば小さな滑り台が申し訳程度に置いてあるのみ。これはどうしたことか? 公園を管理する葛飾区役所に問い合わせてみた。


筆者 「あの、本田公園にあった土管はどこへ行ってしまったんでしょうか?」

役場の方 「ああ、あれは平成18年の11月に撤去されましたよ」

筆者 「(ガーン!)え!っ、いったいなぜ?」

役場の方 「本田公園は地域の避難所に指定されているため、遊具はなるべく撤去することにしたようです。周辺には他にも公園がありますので、子供さんにはそちらで遊んでもらうということで」


そうすか・・・

ショック! つーか、そんぐらい調べとけよ、おれ。

いやいや、まさかなくなってるなんて思わなかったんだもん。ロケ地とかって大抵保存されるものだと思っていたが、べつに上戸彩とか関係ないらしい。ドライだぞ、葛飾区。

まあ防災、大事だもんね。


 

 
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