さあ、絵を描こう
キャンバスは決まった。後はどんどん絵を描いていくだけである。 ハンズで買ったロープをキャンバスの上に出す。
ロープで絵を描くということは、一筆書きで表現出来るモチーフを選ぶ必要がある。
10メートルのロープを使って、まずは人の形を作ってみる事にした。
実際にやってみて分かったのだが、これが結構難しいのだ。頭の大きさや腕の長さなど、どれくらいの配分で形を作ればいいのか分からない。
何度か失敗を繰り返し、ようやく記念すべき第1作目が完成した。
タイトルは「ミュージカル」である。
割りとバランス良くミュージカルダンサーを描く事が出来たと思うのだが、最後に少しだけロープが余ってしまった。
ミュージカルダンサーが髪をなびかせている様子、を表現しようと思ったら波平になってしまった。
ピッタリ余らせずにロープを使うのは難しい。
キースへリングをお手本にする
やはり、キースへリングさんの作品をお手本にすべきだと思う。路上ペインティングの先輩に習うため、プリントアウトしておいた作品を真似て描いてみる。
最初に真似るのは、「ドッグ」という作品だ。このポップなラインをロープで再現してみよう。
お手本を注意深く分析しながら、慎重にロープに折り目をつけていく。 この「ドッグ」は。カクカクしたラインが重要だ。
カクカクさせる事に力を注ぎ過ぎて、ロープが足りなくなってしまった。 お手本と比べると脚が長過ぎる。
前脚の部分からやり直しだ。
すっかり夜も深まってしまい、体の芯から冷えて来た。
あ、ここで熱燗を飲めば林さんとチャットで決めた事が実現出来る。 でも、熱燗セットは用意していない。一度戻って熱燗セットを用意するか?
いや、やめとこう。 ここで熱燗を飲んだら眠ってしまいそうだ。
眠ってしまった結果、ここに鑑識の人が僕の人型を描きました。なんて落ちはいらない。
一応、「ドッグ」らしきものが完成した。
でも、全然キースへリングじゃない。口が長過ぎるし、まだ脚が長い。そして何より、かわいくない。
引き続き、ハートマークに手と脚が生えているキースへリングの「無題」を描いてみた。
先ほどの「ドッグ」よりも難易度が上がってしまった。直線と曲線の組合せがとても難しい。
形を作っては壊し、壊しては作り、壊してる途中にロープがからまったり。 だんだんイライラしてきた。
更に、場所選びが悪かった事も途中で分かった。 駐車場の入口なので、結構な人通りがあるのだ。
小さな子供がチラッと僕の方を見て、「怖い」と母親に駆け寄った。 母親も僕を避ける様に、そそくさと駐車場の中に入って行く。
ハートマークから手足が出てるかわいい絵を描こうとしてるのだ。「怖い」とは何事だろう。
完成した絵を見て後悔するぞ。
やっぱり、何か違う。
ロープが細過ぎたのかもしれない。キースへリングのタッチは、もっと太くて力強い。
ロープドローイングにキースへリングの絵は向かないのかもしれない。
よし。 オリジナルでいこう。