東京にもたぬきがいるらしい、という話を聞いた。はじめはこんな都会に犬や猫以外の動物がいるのかと思ったが、「餌が豊富で、ねぐらに適した大きな公園や寺社の敷地がある都会はたぬきが住むのに適している」という説明をされて納得した。
いると言うならぜひ見てみたい、東京のたぬき。
(text by 藤原 浩一)
北区・荒川河川敷へ
情報を頼りに東京の北端、浮間舟渡駅まで来た。はじめて来る人は「ここは東京? 埼玉?」という気分になるかも知れないがまぎれもなく東京である。ここから1キロくらいの場所にある荒川の河川敷にたぬきが出没するらしい。
浮間舟渡駅
駅前にはいきなり大きな都市公園がある。中央に大きな池があり、その周囲に木々が立ち並んでいる。このような場所があるならば、東京にたぬきがいても不思議はないな、という気にさせられる。期待はふくらむばかりだ。
木々であふれ気持ちのいい公園だ
公園内にたぬきがいるのではないかと目をこらしたが、休日ということもあって人が多く、たぬきどころか犬や猫もいなかった。逆にここで出現されたらすぐに記事が終わってしまうので却って安心というものだ。
たぬきかと思ったらカバンであった
公園を抜けると、目的地である荒川河川敷の土手が見えた。情報ではこの向こう側にたぬきのねぐらがある、ということだ。
この向こうにたぬきフィールドがある
ファインディング・たぬき
土手の上までやってきた。
カメラには収められないくらい広大な敷地がそこには広がっており、土手の上というのはそれを一望するのに最適な場所に思えた。
ここからたぬき探すのかー
よし、と意気込んで、その場に座り込んだ。
この広大な敷地にいるという(いないかもしれない)数匹のたぬきを見つけ出す、という事実に怖気づいたわけではないぞ。
ちょっと考えたくなっただけさ
しばらくぼーっと敷地を眺めた後、意識が帰ってきて「いやいや、ちゃんと探さないとだめだ」という気になった。
タヌキを探すために持っていた唯一のヒント「たぬきは荒川河川敷のどこかにいる」はもう役割を終えたので、ここからはノーヒントで挑まなくてはいけない。
ここにたぬきがいるらしいぞ
土手を川側へ下りてきた。マラソンやサイクリングを楽しむ人たちがちらほらとみられる。この辺りにたぬきがいるらしい。道路脇にはきれいな花が咲いていたが、たぬきもこの花を見ているのだろうか。
素敵だね
道端に咲くきれいな花々を横目に歩き続けた。しかし、一向にたぬきが現れる気配はない。本当にいるのか?
このまま歩き続けても進展がなさそうだったので脇道に逸れてみることにする。
たぬきゾーンへ
草木が茂った細い道に入っていく。アスファルトで舗装された先ほどまでの道と比べると、こちらの方がたぬきがいそうな雰囲気がする。たぬきゾーンに突入だ。
たぬきも好むであろう雰囲気である
しばらく歩くとぴちゃっという水が跳ねる音がした。音がする方向を見ると水たまりのようなものがあり、そこで何者かが動いたようだ。たぬきか?
何がいたのか暗くてよく見えない
音の主を確かめるべく、足もとにあった小石を水たまりに放り込んでみた。コントロールが悪く、手前の草むらにぶつかった。3回目くらいでようやく水に落ちた。
早くもたぬき発見?
かえるだった。
気を取り直してまた歩き続ける。
歩くしかないのだ
うっそうと茂った木々を見るにつれ、たとえ東京でもこういう場所にならたぬきはいるのではないかという気になるのだが、一向に現れる気配はなく時間だけが過ぎていくのであった。
しばらく歩くと道の上に黒くてコロコロしたものが点々と落ちていた。
お、これは!
これは、もしかしたらたぬきのフンなのでは…。
むーん
アスファルトだった。
もしかしたらこれはたぬきのアスファルトなのでは!?と疑ってみようとしたが、たぬきのアスファルトとはなんだろうか。
苦難の旅はまだ続く。