デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


はっけんの水曜日
 
東京でたぬきを探す

ファラウェイたぬき

 かえるやアスファルトの余韻に浸りながら、引き続きふらふらと彷徨い歩いた。たぬきらしきものはなにもない。

 同行してもらったライターの大北さんに「いや、ここら辺にいるらしいんですけどねえ」というセリフを、呪文のように何度も繰り返し唱えつつ。なんだか申し訳ない。


このような景色の中を歩き続けた


 童話「青い鳥」では、幸福の青い鳥を探し求めたチルチルとミチルがその旅の果てに、家の鳥かごの中で青い鳥を発見する。僕も同じように、家でたぬきを飼っていたのに気づいていないだけかもしれないのだろうか。

 いや、今回の企画はそんな記憶抑圧コンテストみたいな話ではない。そもそも自宅は埼玉なので「東京のたぬき」という趣旨からも外れている。


このような隙間を覗いてみたりする愛のある作業

 

たぬきタイム

 そうこうしているうちに、日が暮れてきた。

 だがこれも作戦のうちだ。事前に調べておいた情報によると、たぬきは夜行性らしい。たぬきタイムは夜なのだ。


夜が来る

 だったらどうして太陽が出ているうちから探し始めたのだ、と言われるかもしれない。それはもしたぬきが出て来てくれるのならば、明るい方が写真に撮りやすいからだ。

  そうと決れば夜を待つだけだ。日が落ちるのを待ちがてら、土手の中段あたりで休憩する。

暗いのでライトで顔を照らす

すると虫が寄ってくる


 時折、たぬきか思うような音がするのだが、振り向いてみると飼い犬やおっさんの鳴き声だということが分かるのでがっかりする。

 

 すっかり日も落ちたので、来るときにきた道を戻ってみる。明るいときとは違い、人通りも少ない。ライトを照らしながら歩いていると、周りからは河原の警備をしているように見えるのではないだろうか。


探せ探せ

御用だ御用だ

 何を探しているのか忘れないように、我々はたぬきの話をしながら歩いた。(「たぬきときつね、どっちが好き?」など。)それでもたぬきはなかなか姿を現さない。

 草むらからガサッという音がしたり、あやしい物陰が見えたりする。でもそれは風の音だったり、スーパーのビニール袋だったりするのだ。それはたぬきとはまったくかけ離れた、絶望という名の怪物である。

ゴミ箱にいそうだが

いないのだ

ゴム

スーパーのふくろだ


 目的の何かを見つけることができないまま、我々はスタート地点の土手まで戻ってきてしまった。探し始めてからもうすでに4,5時間が過ぎようとしている。万策尽きた状態だ。


ここは引き上げよう


 もしや、公園や駅の方に出かけているのではないかと思い、来た道を戻ってみる。いる、きっといる。


あれか!

た…ぬ… 


 ちょっとこのままだと記事にならないのではないかという焦りが、何でもいいから「あれはたぬきだった」と僕に言わせようとしている。だが、冷静になろう。

 考えられる状況としては、

1.この辺りにたぬきが存在しなかった
2.たぬきは存在するが運悪く出会わなかった
3.たぬきは人間に化けていた

というものが挙げられる。


うーん


 1.この辺りにたぬきが存在しなかった であるとすれば、我々はありもしないものを探していたということになる。滑稽だと思われる方は笑って頂いてかまわない。人々の笑い、それが僕の望みだ。

 2.たぬきは存在するが運悪く出会わなかった という考え方は、不運には違いないが東京のたぬきの存在が否定されたわけではない。僕は「たぬきがいる」という希望をつかむことができる。

 3.たぬきは人間に化けていた の場合だとすると、今日の経験のどこかに奇跡があったわけで、僕は救われる。

 うん、よし。大丈夫だ。何も問題ない。どの場合でもオッケー。あえて言うなら、完璧。世界は輝きに満ちている。

いるらしいけど、見つからなかった

 というわけで力及ばずたぬきを見つけることはできなかった。でも見つける人は見つけるので、結論としては「東京にたぬきはいる、って言う運のいい人もいる」とでもなるだろうか。

 すこし投げやりな結論になってしまったが、単に頑張って歩いたのに見つからなくて悔しいだけだ。

 ちなみに冒頭の画像は、先日高崎に行ったときに見つけたたぬきっぽい動物である。たぬきかどうかは知らない。

4.探すものを間違えていた


 
 
関連記事
未確認生物を探す
熊本で美少年を探す
おしゃれ長ぐつを探す

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.