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ひらめきの月曜日
 
エレベーターのランプを作る製作所に

こうした製品が毎年500セットぐらい生み出される。ランプはアクリル製のものが多い。
こういうものが規格品。よく見るデザインです。見憶えありますよね?
最近は大型化、ビルと一体化したものが時流
大きなホールランタンの例、六本木1丁目泉ガーデンタワー(Photo:Y.Terashima)

工場見学の前に、ちょっとお勉強しましょう

――今村さん、この会社では年間にどのぐらいのランタンを作るんですか?

今村 資料がないのでわかりませんが、500セットぐらいは作っているんじゃないでしょうか。梅田さんはご存じだと思いますが、エレベーターは意外にけっこうビルによって種類が様々あって、大量生産が難しいんです。ランタンも手作りが多いんですよ。

――手作りでつくるんですか? ちなみに、このランタンってひとつおいくらぐらいなんでしょう

今村 ランタンは2種類あって、10種類ぐらいのパターンからそれっぽいものを選んでいただく規格型と、オーダー型に分かれます。規格型は簡単に作れますので、安いものでは2万円程度で作成可能です。対するオーダー型はピンキリ。今はそれほどでもないですが、バブルのころは100万円を超えるようなものも多いですね。

――100万円ですか。高いと思う反面、そんなものか、という気もしますが。

今村 1個100万円ということは、こういうものは1個じゃなくて、一つのフロアに数個置かないといけませんよね。ワンフロアに10個置くとして、それが60階建てのビルだとして、ホールランタンの数はかなりの数になるんです。ま、いくらバブルとはいえ、すべてのランタンが100万円なんて発注はまずありえません。たいていは1階など、多くの人が乗るところだけ豪華にしておくんです。1階や展望台のある最上階以外は規格品で安価に済ませたりするんですね。

――なるほど。最近のトレンドなんてあるんですか?

今村 色でいえば白いランプが多くなりましたね。80年代ぐらいはカラフルなランプがもてはやされたんですが。あとは、巨大化・大型化しているんです。また、全体的な流れで言えば、時代が今にいけばいくほど、目立たなくしていこうというのが強くなる。ランタンはどんどんビルと一体化しています。

――やっぱりランタンの開発には苦労されるんですか?

今村 最近のビルの特徴として、個性的なランタンを作ってくれ、という発注が多いんです。アルマーニのランタン(1ページめ参考)は世界最小のランタンにしました。このように昔と比べても様々なランタンの開発が必要になって、やりがいはあるけど大変ですね。

===

ちなみに、昔のランプはのぼりが緑色のランプ、くだりが赤色のランプ、ということが多かったと思いますが、あれはエレベーター協会が推奨した意匠らしい。なるほど、そんなことまで決めていたのか。


というわけで工場見学開始!


約50人が働く。エレベーターのホールランタンだけを作る会社としては最大規模

 

アクリルの材料。多くのランタンはアクリルに光を当てることにより、輝きを表現する
アクリルの色味も様々な種類がある。同じに見えるアクリルも、並べると色味やすきとおりかたが違う
そんなアクリルをまずはマシンでがりがり削る
左のように線が入った工具で削ったものを、やすりできれいにしていく。
これらのアクリルはそれぞれの発注先ごとにまとめられる
中には中国行きのものも。

50分の40が現場です

エレベーターのホールランタンを作る工程は大まかにいうと…

A.設計 (意匠図や建築図面をを参考に作図)
B.板金でケースを作る
C.板金でカバーを作る
D.アクリルで点灯するレンズを作る
E.ランプや配線を組み立てる
F.B〜Eを組み立てる
G.最後に検査を行う

という流れである。50人弱の会社のうち、直接の制作に関わっているのが大多数の40人ぐらい。うち、組立グループが一番人が多くて15人だ。

アクリルは乳白色のものがいいらしい

それぞれの過程が興味深いが、まずはアクリルでレンズを作る行程を見ていこうと思う。

アクリルはホールランタンの顔であり、このつるつる感がエレベーターの先進性を象徴するものだと思うのだ。(この辺は今村さんの言葉ではなく僕が勝手に書き加えている)

そんなアクリルの作業工程を見ないわけにはいかない。

アクリルというのはもともとは無色透明のものだが、ホールランタンになるものはあらかじめ色をつけた乳白色のものが多いのだそう。この理由を今村さん、お願いします。

今村 はい。光をあてると、少し濁っている色のほうがきれいに明かりが出るんです。無色透明のものは点灯具合にむらがあるんですよ(端っこのほうが点灯していないなど)。

へー。明かりがない状態で見ると透明なほうがきれいなんですけどね。

まずはアクリルを機械でがりがりとおおまかに削っていきます。うーん、いかにも工場見学っぽくなってきましたね。ここは機械任せ。音はうるさいし破片は飛び散るけど、まあ僕にもできるんじゃないでしょうか。難しいのはその後の微調整。

まずは工具で人間の手である程度そろえていきます。ここでもうすでにある程度完成しているのですが、それをやすりでこつこつ削っていくわけです。

これが熟練の技が必要なのですね。1日にどれぐらいの数のアクリルを作るのですか?

削り担当の女性 うーん、まあ忙しいときと暇なときで差はあるけど、ざっと100個ってとこじゃないかしら。何、あんたも磨きたいの? コツは、そうねー、忍耐じゃないかしら。とにかく根気よく磨き続けること。あとは力加減ですね。縦とか横とか同じ向きにばっかり磨いちゃダメ。やっぱり円を描くように磨かないとね。

だそうです。ちなみに、設計担当の今村さんでも、この仕上げの工程はできないのだとか。うーん、磨くだけでも奥は深いんですねー。


中国を視野に入れる

今村 最近はこういったものを中国にも出荷しているんです。中国は今や高層ビルが増えてエレベーターの需要も増えてますよね。今、島田電機では中国に工場を稼働させるという計画があるんですよ。

世界の工場こと、中国で作ればいいじゃん、とお思いのかたもいるかもしれませんが、こういった技術はまだ日本のほうが何歩か先をいっていて、中国の業者には日本のメーカーほど良いものは作れないのだとか。ジャパン・アズ・ナンバーワンなわけですな。

今村 次はこれらのアクリルと、電球を入れる箱の役割をする板金の行程を見ていきましょう。


 

 
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