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ちしきの金曜日
 
段ボールキャラ図鑑
ここには夢のキャラがいっぱい‥ゴミじゃない!


あらためて当サイトの過去記事を読むと「デイリーポータルZって工作率が高いなぁ」と思わされる。木工細工に布細工・紙細工、あと料理だって一種の工作だ。シャレにならないほど図工・工作の成績が悪かった自分には羨ましい限り。マネしたところでうどんがお好み焼きになっちゃいそうなもんだしなー。

工作の時間で最初に作らされるもの、といえば紙細工。もうこの「作らされる」と言ってしまう所に工作苦手感が出てますが。一見この工作の時間の延長のような、安価な段ボールを使ってさまざまなキャラクターを生み出している芸人さんがいる。これがもういい味出てるんですよ。

大坪ケムタ



まずは数々のキャラクターをご覧あれ

数々の段ボールキャラを作り、それを着てジョークを飛ばす芸人、その名は飯塚俊太郎さん。ワハハ本舗所属のピン芸人だ。数々のキャラクターについては後で触れるとして、現在メインキャラクターである『冷蔵庫マン』の姿で見たことある人がいるかもしれない。その芸を見たい方はYouTubeあたりからどうぞ。


決めセリフは「ヒエヒエ〜!」です。

2年くらい前から飯塚さんの芸をあちこちで見せていただいてるのだけど、この段ボールキャラの作り込み&インパクトが毎度凄いんです。まずはその数々を写真で見ていだだこう。「これが舞台の袖から出てきたら」と想像して見ると、その濃さを分かっていただけるはず。

携帯サイトでレビュアーも務めるほどの映画好きでもある飯塚さん、それだけに映画からインスパイアされたキャラが多い。まずは映画『SAW』から。


悪役の「ジグソー」と拷問器を段ボールで。

見た目より意外と頑丈です。
よく見ると作りが細かい!

工作が上手い人って、作りもだけど「適当に見えてそれっぽい絵の塗り方」が上手いんだよなぁ。コレ見るとそれを実感する。ま、飯塚さんも最初からそうではなかったのは、のちほど出る初期作品見れば分かるんですが。

続いては『ゲド戦記』。『SAW』のタキシードに比べると服が一気に安っぽくなった感がしますが、帽子とゲド(右手の龍)のインパクトでフォロー。


服は段ボールの裏側を使ってみました。

ウロコのギザギザも細かく表現。

続いては『パイレーツオブカリビアン』からあの怪物!段ボールだけではありませんが、生活感のある素材から抜けれてないのは分かると思います。


あの怪物デビージョーンズが主に紙製に!

触手はなんとなく分かるとおり靴下です。

キャラリスト。でも実際はもっとある。

‥この3キャラクターで飯塚さんのキャラ作りが見えてきたでしょうか?いずれもこのコスプレを身にまとい、ギャグを連発するのが飯塚さんのスタイル。ひとネタひとキャラクター。ある意味豪勢!ある意味で効率が悪いともいえますが。

もともと文学座の養成所に通っていたという飯塚さんの本格派な声と演技と、このチープながら完成度の高いキャラクターとのギャップが笑いを生む。これらのキャラによるネタについても解説しておきたいけど、文章でくどく説明してもそれこそ寒いだけなので(冷蔵庫マンだけに)、ネタは実際に見てください。

段ボールキャラによる芸を始めてから7年、これまでに作られたのは30体以上。今こう見ると純粋なコスプレとしての衣装にしか見えないけれど、この段ボールキャラを作り出した理由は全く別のところにあったという。


「最初はカウボーイの格好でのネタだったんですよ。それもこういう段ボールじゃなくて、普通の格好で。でもそれのネタ見せ(ライブでやる芸を主催者・プロデューサーに先に見せること)で社長に見せたら、『中途半端に二枚目の人がジョーク言っても面白くないんだよ!』と言われたんです」

−−当時はまだカタかったんですね、表情も喋りも。

「それで段ボールで安っぽいカウボーイハットやガンベルトとかを作ったんですよ。それがお客さんにハマったんですよね。それで社長もこれはイケる!と」


たしかに安い、というかボロい。

先に書いたとおり元は文学座などで本格演劇を学んでいた飯塚さん、ワハハ本舗での最初のオーディションでもシェークスピアを演じたという。そうした出自のカタさもあって、表情や喋りが笑いをとるように当時は出来てなかったそう。

元々はわざわざ安っぽく見せるための小道具としての段ボール。それだけに現在の段ボールコスに比べると、格段に作りは安っぽい。ロクに色もちゃんと塗られてないし。一体何を表してる小道具なのか?すらわかりにくいですが。



被るとそう見えないことも‥ない。

現在の段ボールキャラ路線になったのは、先のカウボーイに続いての2作目が決定的だったという。それが最初に紹介した「冷蔵庫マン」。


「最初は、今家族でご飯を食べてても会話がない、と。それで親と子が和ませるようにジョークを言うキャラ、ということで考えたんですよ。いつも台所にいるから。でも、和ませるジョークが出来なかったんですよ‥」

−−それこそ場を冷ややかにするジョークしか出来なかったと(笑)

「それで社長が『つまんないジョークしか出来ないんだったら悪者にしよう。ライブを冷やす悪人なら、誰も笑わなくてもいい』って言いまして、それで悪の怪人というキャラクターになったんです。それでやったらウケたんですよねぇ」

−−他のキャラに比べての良さってどこだと思います?

「展開があるところですかね。始めて見た人はドアが開かないと思うみたいなんですよ。それが開いて、物が出てつまらないジョークを言うと。それに冷蔵庫は誰でも知ってますからね」


冷蔵庫の中はいつも充実!

ポケットにジョークネタの素材が詰まってます。
顔の後ろも実はこんなに。

「冷蔵庫マンは今ので4代目ですね。やっぱり着るもんじゃないですから、一年間もたすのは大変ですよ」

−−持ち歩くのも大変ですしねぇ、これだけ大きいと。

「でも今は折りたたみ出来るようにしはしてるんですよ。それより強敵は雨ですね(笑)。冷蔵庫マンは一番時間かけて作ってます。気分のノッた時だけ。使命感で作るんじゃなくてね。一日1,2時間かけてだいたい一ヶ月くらいかかりますかねー」


役者としてはこれまでにもドラマ・CMなども出演していた飯塚さん。しかし、芸人としてはこの冷蔵庫マンをひっさげて47歳にしてテレビ初出演。寒いギャグを飛ばしては「ヒエヒエ〜!」とお決まりのフレーズを挟んでいくスタイルも定着。とはいえ悩みもあるそうで。


「でも‥(寒いジョークを)ちょっと身につけすぎましたね(苦笑)」

−−寒いジョークを言う自分に慣れちゃうのは問題ですよね(笑)。

「やっぱり普通に(バラエティ番組の)ひな壇に皆と昇りたいですからねぇ。これからトーク磨かないと‥人みしりとか言ってられないですね」


47歳からのトーク術!ネタを作って段ボール作ってトーク磨いて‥他より一段階多い分大変ですなぁ。


まだまだ続きます、とピンクパンサーからのお知らせです。

 

 
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